おにぎりパーティ | ナノ

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「順平さん、それ。おにぎりじゃなくて巻き鮨ですよ」
「細かいこと言うなよ。俺のデラックス握りはノリが不可欠なんだし……つか、具もそこはかとなく巻き鮨だしよ」

 順平の言葉に天田も否定できないのだろう、「…すごいですよね」とテーブルに並べられた具を見た。

 梅干し、シャケ、海苔の佃煮、たらこ、明太子――そこまでは普通だったが――鰻の照り焼き、卵焼き、ウィンナー、その他各種。

 今は撤去されているが、しばらく前にはヨーグルトやジャムが並んでいた。
 風花曰く「料理の隠し味で使うから」らしいが、おにぎりの具にしてしまうと全面的に味が主張して隠し味にはならなくなる。

「鍋だったら確実に闇鍋になってたなあ、こりゃ」

 もちろん暗いところでする本来の闇鍋でなく、魔女の、みたいな緑色とか――あれ、そんなのを見たことなかったか?



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「俺のデラックス握りはノリが不可欠なんだし…」


「何が、デラックス握りなんだか」

 あれはもうおにぎりではない。
 吸い物として出した味噌汁をすすったゆかりは、順平と天田の方を見て軽くため息をついた。
 その横で同じように見ていた真宵が「私もやってみようかな」と言い出したものだから、やめなさい、と突っ込んだ。しかし真宵の隣にいた風花が食い付く。

「でも、何だかお得だよね」
「風花も何言いだすの」
「うーん。デラックス握りは順平より風花の方が先だったし…ね?」
「あ、あれは三角にするのがすごく難しくて」
「ボールになってたよね」

 アハハ、と笑う真宵。
 料理同好会がいつもどんな風なのか何となく察したゆかりは、ハハハ、と苦笑いした。




おにぎりパーティ
side:順平とゆかり