『わぁー…
ここが、木の葉!』


自来也と別れて木の葉につくまで、さほど時間はかからなかった。
それほど遠い距離でもなかったし、何しろ早く木の葉を見たい一心で走り続けたのだ。
姫にとって、ここが自分自身の里となる予定だった。
綱手が特別に上層部に頼んでくれるらしい。
うまくいけば、姫も木の葉の忍の一人となる。
今まで自分の里のことなど考えたことがなかったが、私には属する里がない。
もしかしたら昔あったかもしれないが、綱手は知らないという。
今日からは木の葉が私の里だ。

青い空。
鳥や花や森。
平和に包まれた里。
姫が思い描いた、木の葉とイメージが重なった。


『今日から綱手様は五代目火影様になられるんですよね
私はその付き人…
…わぁ、すごい
野宿の医者から一気に五代目火影の付き人、医療忍者に昇格!
いっきに出世しました』

「はしゃぎすぎだよ」

『だって、ここが私の家になると思ったら…
いてもたってもいられなくて!』

「…そうだな
…さぁ、いくか」


にぎやかな商店街。
湯気が甘い香りを運んでいる。
看板が色あせ、壁も奇麗な色ではない、白と灰色がまだらだ。
そして、店構えはけして華美ではない。
しかしこちらのほうがほっとする。
何というか、家に帰ってきた、という感じがするのだ。
温かな感じ。

子供たちが鬼ごっこをしている。
はしゃぐ彼らは何ともかわいらしい。
店の前に立っているおばちゃんがにこりとほほ笑んでくれた。
微笑み返す。
…なんて素敵な里なんだろう。

里の奥についた。
この里にしては豪華な真っ赤な壁の建物だ。
里一番の高さ。


『ここが火影邸…。
うわぁー、立派な建物だなぁ…』


少しではあるが庭もある。
ここで植物を育てるのもいいかもしれない。
色とりどりの花を思い浮かべて、いつか咲くであろう花たちに思いをはせる。


「…どなたですか?」

『!』


丁寧に、しかし警戒した目で男が見下ろしていた。
顔に傷をいくつも残している、男だ。
突然現れたその男の人に姫は頭を下げる。
自分の名前と綱手の弟子だと告げると、その人は柔らかく笑った。
その人は奈良シカク、と名乗った。
この里の人はみんな笑顔が似合う。


「あ、奈良家のガキじゃないか!」

「!
これは綱手様、お久しぶりです
戻っていらっしゃったんですね」


シカクは丁寧に頭を下げる。
私をもう一度見てから、男はにこりと笑う。


「しっかり者ですね。
さすが、綱手様のお弟子さんですよ
感激しました」

「まぁね」


!
綱手様がしっかり者…!
…どうしたらそんなことになるのかしら
頭の中身を入れ替えるか、世界が破滅の危機に追いやられるか。
そうでもしないときっと綱手のしっかり者スイッチは入らないと思う、のに。
…しっかり者!
笑っちゃう。

必死に笑いをこらえていたのが綱手にも伝わったらしい。
綱手がにらむので、自然と笑いもひいた。


「そろそろ私はいくよ。
あんたも鹿の世話、ちゃんとやりなよ」

「はい」


もう一度シカクさんは丁寧にお辞儀をした。

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