「どうしたんだよ、みょうじ?」


『え?』






恋哀




見ると課題の数学のプリントは真っ白のままだった。理由は分かってる、から何とかしなくちゃいけないのは分かってるんだけど相手はあたしの先生でもあり保護者でもある雅治くんだから何も出来ない。小林は心配そうに「大丈夫かぁ?」と言ってくれるから心配かけないためにも『大丈夫』とは言うものの全然大丈夫じゃない。あの事雅治くんは覚えているんだろうかとか、あたしのことどう思ってるんだろうだとかまだお母さんのこと忘れられないのだとか考えても考えてもわからなくて混乱している。その上、家に帰れば嫌でも雅治くんと接触するだろうし帰らない訳にも行かない。はあぁ…憂鬱。


「みょうじ、ほんとに大丈夫か?もうそろそろ帰るか?」


『大丈夫!ちょっと考えごとしてただけだし』


「…そっか」


せっかく小林が分からないところの数学教えに頼んできたのにあたしがあんな感じだったから逆に気を使ってなにも聞けなかったんだろうな…小林はペン回しをしていてあたしはそれをなんとなく見つづける。今だあたしのプリントは真っ白なのに対して小林のプリントは半分埋まっていて、あれ?なんだ、数学分かんじゃんか。それならなんで大好きなサッカーサボってまで数学やってんの?続く沈黙、普段なら気まずいんだけどあたしは気持ちがどんよりしてて今あたしの頭の過半数は雅治が占領中だ。さっきから小林が何かを必死にごにょごにょと言ってるのだけれど聞いていなかった。いや声が小さくて聞こえなかったんだ


「だから返事を聞かせてほしいんだけど」


『え…なんか言ったの?ごめん、もう一回』


「……〜っ!だからお前が好きなんだってば!」


…小林があたしを?好き?あはは、ないない。だって小林はサッカーばかだし。サッカーが恋人だし。あー…なんか考え過ぎたせいか頭がふらふらする、視界も掠れて…風邪かな、あ雅治くんのうつったのかも。だってキスしちゃったし。小林には悪いけれどもう帰ろう、そう思って立ち上がるとふらりとあたしの身体は傾いていった




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