「やっぱにおー先生ってかっこいいですよねえ」
「照れるからやめい」
「あはっ好きなお菓子とかありますか?」
「んーくろまめ?」
恋哀
きゃあきゃあと教卓にドカッと座っている雅治くんの周りをグルリと女子が囲んで騒いでいるのをあたしは冷めた気持ちでそれを見ていた。だいたい黒豆ってお菓子じゃないし(くろまめだってぇーかわいーとか騒ぐ女子の皆さんに是非現実を知ってほしい、ってかどこが可愛いんだ)
「いやー今日もモテるよねぇ、あんたの雅治くん」
『あたしのじゃないし、ってかいらないし』
あーんなオッサン御免だわ…あいつ嘘ついてあたしをからかって楽しむし、プリッとか謎なこと言うし 目つきとほくろエロいから。いやいや最後のは関係ないでしょとか和音は苦笑いしてるけど知らない!
「ねえー生徒と教師の禁断の愛とか芽生える予定なし?ほら一緒に住んでるんだし あ、もしかしてもうデキちゃった系?」
いきなりそんなこと聞くから思わず飲んでいた緑茶を噴き出しそうになった ゲホッ ないよないない あたしと雅治くんに限ってそんなことがあるはずがない 雅治くんは大人のお姉さんが好きだしあたしはサッカーとかやってる爽やか少年がタイプだったりする あ、ほらちょうどクラスメートのサッカー少年小林がやってきた
「みょうじー悪ィ、数学のノートちょーだいっ」
『あげないよ』
ちょっと意地悪してみたらペシッと顔の前で、頼むっ貸して下さいっと手を合わせた小林はサッカー部の一年生エースだ。スポーツ刈りに、健康的に焼けた肌。そうあたしはこういう純情爽やかスポーツ少年の方が好きだ。まあ言ってしまえば今はあんまり恋愛には興味ないんだけどね
『ほい』
「あざーす!」
右手を軽くあげてパタパタ走り去っていく小林を見てぼんやり思った 今は…そうだなぁ、家で美味しい料理研究したり趣味とかに没頭したりこうやって友達と話したりしてる方が楽しいんだよね
「そんなこと言ってーわたしに彼氏出来たらどうするよ?」
『…出来たの?』
「いや、出来てないけど…!」
『ほーら』
「でもでも出来ちゃうかもしれないよー!あ、ひどいひどい そんな冷めた目で見んな馬鹿ーッなまえなんて小林とラブラブしとけ〜!!ばーろーっ!」
『はぁ?なんで小林関係ないし。』
「ふふふふ、あるよあるよ!」
はニィと必死に席で数学のノートを写す小林を頬をついて笑って見ていた。
「小林があんたを好きだって知ってるー?」
『有り得ないわ、それ』
「有り得るんだって」
だってあいつさ、サッカー馬鹿じゃん?ヘディングすっげするじゃん。その度に脳細胞潰れてるって思うんだその度あほに…いやいやそういうことじゃなくてあたしはサッカー一筋!サッカーが恋人です、キラキラ少年、青春してます!みたいな感じの小林の方ですきであって(あ、恋愛感情じゃない好きなんだけどなんかマンガのキャラがすきーみたいな感じの好きなの…変かな?)
「まあ、仁王先生が相手なら小林もキツイかあ」
「そうじゃのう、小林はみょうじが好きなんか?」
「あらー仁王先生」
『…仁王先生、いきなり会話に入ってこないで下さい』
「冷たいのお、お前さんぐらいじゃ…俺がこんなに近づいても焦らへんの」
ぶぅーと口を尖らせる姿でさえ白々しい…さらに横でけらけら笑ってる咲音でさえいらつくのだが(二人ともあたしをそっとしておいてくれないだろうか )
「ほいで話戻すけど小林はどれくらいみょうじが好きなん?」
え、どれくらいとか
「えーっとえーっと授業中も目で追っちゃうくらいであります!最近は猛アタックを繰り返しておりますっ!」
「ほぉー」
そう一言、雅治くんは数学のノートと格闘している小林の元に近寄っていく おおおこれは俺のなまえに手ェ出すな、とか言いに行くのかーッ!とか一人で白熱してる咲音はよそに若干引き攣った顔で雅治くんを見守る
「小林、みょうじがお前さんのこと嫌いやって」
ほーら、いらんことしてる