『ちょ…切原手首痛い』


ぎゅうと握られた手首を軽く揺らすと切原はピタリと足を止めてゆっくりこっちに振り返った さっきからずっとだんまりを決め込んでいた切原が口を開きかけたのだがそっぽを向いてまた口を閉じる…が、意を決した様に再び真っ直ぐに向き直った


「なぁ……おまえ、おれと初めて会ったの高2になってからだって思ってた、だろ?」


『え?う、うん』


そう、第一印象は要注意人物で嫌いなタイプだった だけどあの夜家に帰って中2の時のクラス写真を見れば確かに切原はいた


「…んでさ俺がその時からお前が好きだったってこと知ったらどーする」


3年間片想いだったってこと?…長い、とゆうか


『ジョーダン、なんでしょ』


俺がお前を好きだなんてジョーダンだしなんて言われたらもうどうしようもないし、友達になったとしても今どう接して良いかもわからない


「まじで好きだった」


苦しそうで切なそうな切原の言葉に何故かギュと胸が痛くなった 切原を傷つけたのは他でもない私なのだとようやく気づく、でも自分を庇護するような考えは良くないのだけれど切原のジョーダンに私もまた傷つけられたのも確かだ それに切原はもう好敵手のなまえさんが好き、それは十分わかってるつもりだ もちろん邪魔なんかするつもりなんかちっともない。だけど、だから

『ごめん、すき』


これで私にけじめをつかせてほしい


嫌いだった、大嫌いだった
だけど今更好きになったなんて調子が良すぎる 言った途端後悔と解放感が入り混じったそんな気分になって 気づけば足は勝手に来た道を戻っていた


「ちょっ…!」


切原の焦った様な声が後ろから聞こえてきたけれどそんなの知らない 全速力で走った、走ったけれど呆気なく捕まった また腕を捕まれた あの時のように思いきりやっても解けないから目茶苦茶に振り回したら切原の目の辺りを叩いてしまった


『あ』


「…っ捕まえた」


切原の目はあの時の様に赤くてだけど無邪気に笑う(あの時はこの笑顔が怖かったのに今は胸が高鳴る)


『ごめん、痛かっ「許さないから、傷もんになったらどーしてくれんの」


『…どうしよう』


爪が当たってしまったのであろう頬が少しキレている 切原の整った顔が傷つけたと知れれば復讐が…恐すぎる


「あんた責任取ってよ」


『……出来ることなら』


「言ったね?」


まさにニヤリと言った風に切原が笑った瞬間嫌な予感がした
あ、ちょ…セクハラは無しだから!腰に触るな!!必死に抵抗していると右手で腰を抑えられたまま左手で顎を持ち上げられ軽いリップ音


『…出来ることならするって言ったけど冗談でこんなことするなんてひどい』


切原は私が好きなことを良いことにこんなことを平気でやってのけるんだ…





「好きじゃない奴になんかするかよ」

『…ジョーダン、』






「まじだから」




甘いかおり、苦い味


(俺さお前が思ってる以上にすっげ好きなんだ)


(…遊んでるくせに)


(もう遊ばねーし)