番外編




地味で素っ気なくて人見知り
それが俺のみょうじなまえの第一印象だった



自分で言うのもなんだけど俺は人気者だ(なんたって立海テニス部の期待のエースな訳だし!)んで、好きな女のタイプは美人でボインなお姉さん。もちろんそーいう奴が告白してきたら付き合ったりしてみた(俺が飽きてあんま長続きした覚えはねーけど)とにかく俺はそれなりに学校生活は満喫してた訳…だが









「…はぁ!?ちょ、なに勝手に決めてんっスか!!!」


「寝てたお前が悪い」


名簿に後期の委員会のクラス役員を書きこんでいるらしい担任の宮津は顔も上げずにそう答えた…そう、俺は今日朝のHRでおもいっきり一番前の席爆睡していたわけだ(たるんどる!とか言って副部長が朝練んとき外周増やして疲れたせいだそうに違いない)そいで、人気のない後期の図書委員に俺が抜粋されていた 後期の図書委員は何かと面倒くさい。秋、春とかけてやたら新しい本が入ってくるし それを並べたりラベル貼ったり…あーやりたくねぇ、部活の時間が減るし。宮津はニッと笑って(無駄に爽やかなんだよ!)「みょうじが相方だぞ」なんて…相方って漫才じゃあるまし、ってかみょうじって誰だよそう口を開く前に『失礼しまーす』だなんて女子が割り込んできやがった

「お、どうした?」


『先生、終わりましたよ』


はい、と大量の紙の束を宮津の机にドサッと置いた 宮津は「みょうじは真面目で仕事が早いなー!切原とは大違いだ!」なんて笑う へいへいどうせ俺は不真面目な奴ですよーって…みょうじって…………コイツ?うわ、地味!


「おっ、そうだ!みょうじ!これから委員会の集まりだよな」


『え、はい…そうですけど』


「コイツ連れてけ!同じ図書委員なんだ」


バシッと俺の背中を叩いた(イテーよ!)げえええぇっ!行きたくねーよっ!なんて宮津の前にサボる訳にも行かず みょうじがちらりと俺を一瞥して『分かりました』…感じ悪ッ!あーあ、マジついてねー!失礼しました、と言って職員室を出ていくみょうじに続いて俺も仕方なくついていく つか図書室ってどこだっけ?俺使ったことねーからわかんねーってかサボりてー!!!


『あのさぁ、別に来なくて良いよ』


「は?」


いきなり止まってこちらに振り返った、上履きが磨かれた床に擦れてキュッとなる


『私一人で内容聞きに行くし、別にやりたくもない委員会やっても面倒くさいだけでしょ?



そう言ってまたスタスタと歩いていくみょうじに唖然としてしまった え?もしかして面倒だとか行きたくないのバレてた…俺、そんなに顔に出てた?
うわ、なんか恥ずかしいてか初めて接触した奴にそんなことを言われるなんて俺にとっては心外だった…から遠のいていくみょうじに小走りで横に並んだ

「いーよ、俺手伝うよ」


あ、真田副部長に言ってない…いいや後でちゃんと委員会で遅れたって言ったら遅刻の罰は免除…のはずだけどまず委員会入ったってこと信じてくれるかな

『いいよ、部活行ってきたら?』


ガラッと図書室のドアを開けて俺が入る間も無く閉めようとするから反射的に止めてしまった

「…」


俺って今まで女子にこんな扱い受けたことねーから何故か焦ってるってかショック…?え?もしかしてコイツ俺のこと嫌いとか…?


「あ、図書委員の人?」


中から3年らしき人が声をかけてきてみょうじはコクリと頷く


『2年のみょうじです』


「みょうじさん?あ、じゃあラベルの貼付けよろしくね!」

分かりました、とみょうじは図書室の奥に向かう 俺もそれについて行こうとすると俺を見て「あー赤也くんじゃーん」とか騒ぎ出す…誰だよ


「あたし3年の木本って言って…」


「あ、すみません 俺も一応図書委員なんで仕事するっス」


「えー、いいよぉみょうじさんにやらしたら」


うぜーってか俺ぶりっ子嫌いなんだよなあ、つか腕に巻き付くなつの!嫌悪感を覚えて俺は腕を乱暴に払って「アンタうぜー」って言ってやったら「ひどい!」とか叫んで図書室を出ていく


『行ったら良いのに』


すでに黙々とラベルを貼っつけているみょうじの向かい側の席にドカッと座った


「アイツうぜー」


『そうなの?部活は?やってないの?』


あれ、コイツ俺の事知らない…?自意識過剰かもしれないがコイツは俺が好きでツンツンしてるのだと(は、恥ずかし!)


「…早く部活やりたいけど俺が委員会の仕事やらなくちゃお前も困るだろ?」


『へぇ、見た目チャラチャラしててもやるときはやるんだね』
先程の無表情とは打って変わって嬉しそうに微笑んでいるみょうじに俺は顔が赤くなるのを感じた うっわ、反則だろ…ってかこんな風に笑うんだ!
ベタだけどこの時この瞬間俺はみょうじにしっかり落とされた訳だ もちろんその後の委員会もちゃんと行ったし(一ヶ月に一回だったけど)高校2年でまた同じクラスになって「久しぶり!」なんて声かけてみたら『すみません、誰?』なんて














『ふざけないで、私あんたのこと嫌いだから』


「(…まさかのふりだし以下から?)」