『…は』


繋がれた手が熱い、ドクンドクンと凄い勢いの脈拍の音が切原に伝わっているんだろうかとか考えれば考えるほど体温が上昇する気がした こんな暗い道で手を黙って繋いだまま立ち止まっている二人組はきっと怪しいこと極まりないだろうなぁ…私は何かもう切原の顔が見れないし何も言えない状態だし(何言ったら良いか分からないし)とりあえず切原から切り出してくれることを待ってみたのだが破られるどころか重くなっていくような沈黙に私が耐えられず話を切り出した


『あの、私は今日切原を初めて知って』


「き、…今日…!?」


切原が素っ頓狂な声を上げた
私はん?と思いながらも『そうだけど』なんて答えたら切原は重くて疲れたような溜息を吐き出した


「…中2ん時同じクラスだったんだけど」


『…そうだっけ』




覚 え て な か っ た




「委員会も同じだった…」


『なんか…本当にごめん』


正直本当に申し訳ないと思った私ってこういう時自分が嫌になる だけど切原は笑って「みょうじらしー」なんて言うのだ
あ、もう何かそんな顔で笑わないでほしい。何か動悸がするから(心臓に疾患でもあるのか?)どうしよう、どうしよう…!嫌いなのに大嫌いなのに!天敵なのに!!焦って口をもごもごさせている私をしばらく眺めたかと思うと切原はいきなりパッと手を離した








「ジョーダン」


今まで熱があるかのように熱かった手が一気に冷めていく気がした え、あ?


『…冗談って?』


「だから俺がアンタを好きって話」


いたずらがバレた時のように妖艶に微笑んでいてバックの月が何故か切原に味方しているようで憎たらしい クルリと先程通ってきた道に向けて私に背をむけるとポツリポツリとした言葉で混乱している私を追い詰める

「嘘、信じた?俺がアンタみてーなん好きになるはずないじゃん」


「ちょっとあんたみたいな真面目そうなタイプにかまかけたくなってみたー」


と言い返す間もなくズケズケと。そうだ、切原が私を好きな話なんて所詮噂だって知ってたじゃないか。こんなドキドキする必要だって傷つく必要なんてない(だって私は切原が嫌い)

『私だって言ったけどあんたみたいな奴元々嫌いだし今日もっと嫌いになった』


声が震えた気がしたけどはっきり言ってやった(言った瞬間何かがこぼれそうな気がした)
ピタリと足を止めゆっくり首だけこちらに振り返り寂しそうに笑って「じゃーな」と手を振る姿に何だか私は言ってはいけないことを言ってしまったのかもしれないと後悔の念に襲われた

『…切原なんてだいっきらい』








(きらいきらいきらい!)