証拠も何の根拠も噂だなんて、ほとんどって言って良いほどでたらめだと私は思う。誰かが流した噂に尻尾が付いて回っていつの間にか話は全然違うことになっていることだってあるのだから。そう、噂なんてそんなもの。









「ね、切原くんがアンタを好きって噂知ってる」



綺麗にカラーリングされた赤茶色っぽい短いウェーブの髪を長くほっそりとした指で弄びながら私を問い詰めているのは去年同じクラスだった…好敵手のみょうじさん。可愛くて少し悪ってところ(つまり小悪魔ってやつ)が男子の間でちょっとした話題になっているらしい。そんな人と私は授業をサボって屋上で一対一で向き合っている。相手はもちろん仁王立ちで私は完璧見下されてる感じの状態だったりする。漫画みたいな女子集団のリンチじゃないだけ良かったのかもだけど…やっぱり嫌だなぁ。『あの、切原くんって誰?』


「とぼけないで」


即座に言い返されておまけにギロッと睨まれた。イヤイヤ、本気知りませんけど。いつもは可愛い好敵手のみょうじさんも怒ると怖いんだなあ。


「…とにかく!切原くんに近付かないでね?それだけ。」


脅迫するような、それでいて天使のような微笑みを残すと好敵手のみょうじさんは屋上のドアを乱暴に開けて出ていった。とりあえず…切原って人に近付かないようにしたら済む話…かな?ってか切原って人何組だろう?そもそも同い年?有名人なの?