――みょうじ なまえは死んだ。

それは変わりようもなく変えようもない、事実だ。

世界は回っていて、変わりゆく季節は残酷にもその事実を俺に叩きつける。

俺の中の夏は消、え、た。

俺の一番だった野球も消えた。



遺影に映るなまえはやっぱり笑顔で。
その笑顔は無性に俺を苦しめた。





『絶っ対退院して、みんながいるとこに帰るから。泣きたくなるぐらい美味しいオニギリ作ったげる。』




(嘘…だろ。)

横たわる真っ白な、なまえ。




(だってすぐ治るって………)





『私、退院祝いの希望は甲子園出場の切符です。』







(甲子園一緒に、みんなで行こうって………お前、)





夏は呆気なく終わり秋が過ぎて冬がきた。なまえがいない日常はひどく色あせていて、今頃になって思う。




なんでもっとアイツを大切にしてやれなかったんだろう、って。













(その日から俺は時間を止めた)






END