ピッ、ピッ、ピッ…

規則的な電子音がリアルに耳に響く。ぼやけて綺麗に映らない窓の外の夕焼け。子供が画用紙にクレヨンで描いたラクガキように、それは私の瞳に映ってなんだか滑稽だった。


(あー…私、死ぬんだ。)


まるでドラマのようなことだけれど、命を繋ぐ機械音はその現実を私に叩きつけていて。
怖くない、と言ったら嘘になるけれど不思議と心は穏やかだった。


「なまえ……ッ!!」


隆也の声が聞こえる。

大好きで大好きで仕方がない、彼の声。

あは、隆也が必死なのって貴重かも…

いっつも不機嫌な顔してさ眉間に皺寄せてるし。廉も最近になってやっと慣れたみたいだけど後輩たちからは怖がられてるし、それ直さないと人生半分ぐらい損すると思うよ?
それに女の子に逃げられちゃうよ。あ、隆也って結構モテるのか。そういえばクラスの女子が噂してたなぁ。だけど性格に難アリ、だから………

あたしが…ずっとずっと傍に…



居たかったなぁ








残念、タイムリミット、だ。












『たか…や。』

「…!」

大好き、って言おうとして止めた。隆也には……あの子がいる。だからだいじょーぶ。

結局伝えられなかった。
うん、伝えなくて良かった。
病気だって分かったとき、何度も何度も言おうとした。

嘘の笑顔と言葉。
これを必死に使ってごまかした。

ね、隆也…ちゃんと私笑えてた?

笑えてるように見えてたなら私頑張った甲斐があるよ。
でもさ、結構疲れたんだ。





「なまえっ!なまえ!!」

隆也、そんな叫ばなくても聞こえてるよ、ちゃんと。

…男なら泣かないの!


ほら、笑ってお別れしよ?

もしまた会えたら色々聞かせてね。

野球部のこととか。
みんなのこととか。





だからそれまで、







ばいばい。

「なまえ……好、」




ピー――――――――







(またね、)