それでも、まだ君を想う


ばったり、まさにそんな表現がぴったりやと思った。まさかまさかまさか、この特大マンモス校で、会うことなんて予想もせんかったから。

視力2.0でほんまに良かったなぁと俺はつくづく思う。だいっきらいな先生とか、荷物持ちを頼んできそうな奴らから幾度と無く回避出来たし、席替えで黒板見えんから前になるってことも無かったし。



『あっ!謙也っ』


…先に気づいとったのに、なんで俺は二人の仲良く話してる姿に釘付けになっとったんやろう。
俺はぎこちなく「よ、よう」と片手をひらりとさせた。
なまえがこっちに近寄ってくる。あの、前に見かけたら男も後ろからゆっくりやってきた。


『なんか、久しぶりだね』


「そ…そやなぁ」


『最近どう?彼女さんと順調?』


「、おん」


あかん、なに話したらええんかわからん。俺の雰囲気を読み取ったんか、会話が弾まんことに不思議に思ったんかなまえは目をしばたいた。きっ気まず……


「こちらが、忍足謙也さん?」


『あ、うん!そう』


はじめまして、とペコリと軽く頭を下げたこの男は俺と正反対な雰囲気やった。大学生やのに髪も染めんとピアスもアクセさえしてなくて、まさに真面目といった感じ。服装も落ち着いた色。無表情で古風な顔立ちで、整った容姿やった。


「俺は斎藤っていいます」


「あ…あぁ!よろしゅうな」



………だから、気まずいねんって!!!



『えっと、斎藤くん…先に実習行っててくれないかな?』


「わかった、時間遅れないようにな」


え、ちょ…

どないしよう、柄にもなく俺は緊張しとった。そんな俺とは反対的になまえはニカッと笑って、

『今夜、天体望遠鏡持って久しぶりに星見に行こう!』


………は?


何を唐突に、なまえはそう言うと嬉しそうに駆けて行く。
天体観測、か。望遠鏡どこやったかな……


残された俺はぼんやりそんなことを思った