「好きです」 「…………え、」 ジリジリとした暑さと、むせび泣く蝉の鳴き声。 彼女の顔はこれでもかと真っ赤で、ぶっ倒れてまうんやないかというぐらいだった。そんな真夏日の日。 (俺、告白されたんや…) 目の前におる女の子は同じサークルの、俺の気になってたやつ。向こうから告白してくるなんて思わんかった。いやそれ以前に、まさか両想いやなんて信じられんかった 別にこれが人生で初めて告白されたわけやない。白石ほどやないけど、まぁそれなりに。 やけど今までのは全部断ってきた。部活に、それに大学のこともあったし。 つまり、今までノーの答えしか出したことなくて、イエスの場合、どうやって返したら…いいん? お願いします?ありがとう??…あかん、なんか女々しい。いや向こうからの告白受けてる時点で俺充分女々しいんかもしれんけど。まさかのまさか、いきなりこんなことがあるなんて。てか両想いなんて。 * 『で、結局付き合うことになったの?』 「た、たぶん…」 『多分?なんで??』 「いや、あのなぁ…」 あの後、俺なりの精一杯のオーケーを出した。ぎこちない笑顔で「よろしくな」って言うた。けど、その後なんとなくその場の雰囲気で何も話すことも無く帰ってきた。ヘタレ?最悪?ああもう、ほっとけ。 まさか初めてお付き合いというものをするのに、始まってもないのに自然消滅フラグが立ちまくってるから、俺は、なまえに相談した。なまえは椅子の背もたれを前にして、ガリガリ君を食べとった。 『んーあたしも付き合ったことないし…わかんないけど、さ』 「……意外やなぁ」 『ん?なんで?私、謙也みたいにモテないもん』 そんなはずないやろ、ってツッコミをいれておく。だって俺の友達でもなまえに好意を抱いてたヤツはおったし。 『いやいやほんと、ほんと。だからあんまりアドバイスは出来ないんだけど、ちゃんと彼女に好きって言ってあげた?』 「い、言うてない……」 そういえば、ずっと受け身やったから好きも伝えてない。 なまえはニカッと笑うと拳を突き出して『お守り、貸してあげる』と俺の手の平にクロムイエローの小袋を落とした。開けていいか確認して、中を開くと青白く光る白濁のストーンがついたペンダントが出てきた。 「なにこれ?」 『石』 「いや、わかっとるがな」 多分、パワーストーンよな?効果を聞いとるっちゅー話や。 『効果?もっと女らしくなりたいとか』 「…えええ…」 『あ、純粋な恋っていう意味もあるっぽいよ?謙也にぴったり』 あはは、と笑うなまえの額をこつづいた。そして俺の携帯がぶるぶると机の上でうごめいた。サブディスプレイを見てみると、彼女、から。なまえは察したのか俺の肩をポンッと叩くとリビングを出た。 口には絶対出したらんけど一応感謝しとくわ。 「もしもし」 《あ…忍足くん……》 「好きや」 《え?》 「俺も、お前のこと好きやねん」 沈黙。 勢いで言うてもたけど、今更なんやろうか…と思いきや、「ほんとに…?」と消え入りそうな声が受話器から聞こえてきた。 「ほんまや!」 このとき、何しゃべったかなんて全然、記憶にない。ただ、がむしゃらで必死に言うた愛の告白は後で聞いたら全部顔を覆い隠したくなるぐらい、恥ずかしいんやろなぁ。 |