『久しぶり、日吉』
5年ぶりの彼女との再会。ゆっくり紡がれる、とある喫茶店での出来事。
お前の涙に気付かないふりをすることが、優しさなのか。俺には分からない。分からないから、ただ、笑顔でいる。
終わりを迎えたはずの恋が、鮮やかに甦り俺を満たしてゆく。征服される。でもそれがいやじゃなかった。
お前の笑顔ひとつでこんなにも満たされているなんて。お前は一生気付かないだろう。俺は、それでもいいと思っている。
当たり前すぎて気付けなかったなんて今更すぎる。お前が好きだ。幸せそうに笑うお前の隣りはもう俺のものじゃないのに。
何かを始めるには、何かを捨てなければいけないらしい。でもこの恋を捨てるくらいならずっとこのままで。進めなくても、いい。