腕がじんじんする。
頭がぼうっとする。
ぽた、ぽた、という
効果音が耳を掠める。
床が真紅に染まり出す。
けれど、私は気にしない。
ただ窓の外を見つめるの。
プカプカ浮かぶ雲を眺めるの。
「あ、雨が降ってきた。」
なんて呟いた。
そしたらね、
「それは涙ってんだよ。」
なんて背後から聞こえてきた。
「あ、銀ちゃん。」
声の主の方を見て私はニコリと笑って「女の子の部屋にノックなしで入るなんてマナー違反だよ」なんて言ってみる。
そしたら君は悲しそうに眉を顰めた。
「なにさ、冗談じゃん、そんな顔しないでよ。」
そんな君に私もちょっと眉を顰めてそう言ったんだ。
「もう、やめろ」
そう言う君に私は分かっていながらも「何を?」と聞いた。
そうしたら君は黙りこんで床に転がる血の付いたカッターナイフを見つめるのだ。
そしてなんだか悔しそうに唇を噛み締めた。
「俺が、助けてやる」
ぽそりと呟く君に私はため息をついて傍にあった錠剤が詰まった瓶に手を伸ばした。
パシっ
あと数センチで瓶に手が届きそうだったのに、その手は悲しそうに顔を歪ませた君の手によって捕まえられたんだ。
「いらない、いらないよ銀ちゃん。」
助 け て あ げ る
そんな言葉いらないよ。
善者気取りの偽善者の言葉なんてなんの薬(やく)にもたたないよ。
そんな上辺だけの言葉で私は癒されないの。
「助けなんていらないよ私が欲しいのは快楽だけだよ。」
ねぇ、お願いだよ。
そんな顔しないでよ。
こんな私を見ないでよ。
もういいんだよ。
ほうっておいてよ。
「もう、止められないの。」
手首を切ると気持ちいいの。
薬を飲むとすべて忘れられるの。
快楽が止まらない。
止められない。ねぇ、
わかるでしょう?
「私は異常なんだよ。」
わかってるでしょう?
「薬がないと生きて行けないの」
眉を顰めつつ笑えば君は私の手を引いては唇に噛みついた。
そしてそのあと君は一言こう言った
オレがその薬に一生なってやる
(銀ちゃん、)
(なんだよ?)
(雨がまた降ってきたよ)
(そうか。)
(今度は大雨だ。)
2011.05.02