夕日がほんのちょっとだけ夜にとけたみたいな色をしている。 学校というものはいくつになってもあいかわらずつまんない そう愚痴をこぼすと、となりのシンドバッドは学生らしいなとたのしそうに笑った。ぜんぜんおもしろくないんですけど 学生っぽいってなんかちょっと、ヤだし。おれも学生のことそう思ってたなあなんて 聞いてないから。あ、青 シンドバッドは勝手にある場所へむかう わたしの家とは真反対。 「メシ食ってくだろ?」 いつも、有無をいわさずつれていかれる家 ごていねいに学校まで車でおむかえなんてしちゃって。いいなーなんてちいさなこえも聞こえてくるけど ひまなんでしょとしか思わない。ちいさなマンションの202号室 建築事務所。もう場所なんてとっくの昔におぼえてるし 欲しいなんていってないのに鍵も渡されてあるから 車をとめているシンドバッドはおいといてさっさと部屋にはいる。「いらっしゃい、すぐごはんですよ」やさしい声に出迎えられて おおきな机がならぶ狭いリビングのはしっこの これまたせまいテーブルでいつも三人 おおきな大人がごはんを食べる。並べられたさんにんぶんのお箸 わたしのは赤色。ジャーファルさんが買ってきてくれたお箸だ。箸置きは白い鳩 生きていくのがちょっとたのしくなるくふうらしい 「そろそろ俺んちくればいいのに どうせずっと一人暮らしなんだから」 「そうだけど……シンドバッドの家はいや」 おいしいごはんの上をあんまりおいしくない会話がとびかう。今日の献立はエビチリ たまごスープ サラダ なんだかんだ言いながらもジャーファルさんのおいしいご飯はわたしの生きる糧だったりする。わたしは簡単に生きててよかったなあっておもうから 得に生きていると思う 「まあまあ こうして毎日ごはんを食べに来てくれるから よしとしましょう」 かちゃかちゃと食器の音が響く 家族みたいなことして、家族からいちばんとおいわたしたち。それでもわたしの名前をよんでくれるひとを家族とよぶのなら わたしには家族はこのふたりしかいない。 シンドバッドとジャーファルさんがつくった部屋に住むおんなのこと シンドバッドと 料理上手なジャーファルさんのお話です。 |