「…っ!」

視界が揺れた。乱暴に手を振り放す俺を、名前ちゃ…名前が目を丸くして見る。こりゃァ驚いた…大きく深呼吸をして乾いた笑いを漏らした。
正確には、視界じゃない。脳が揺れた。この感覚は昔味わったことがある。シックスに見せられた、あの…

「電子ドラッグ」

呟いた俺の言葉に、困惑した様に首を傾げる名前。意味が分かってないのか。無自覚程怖いものは無い、ジェニュインが危険視するのも、今なら分かる。数分前の俺は浅はかだった。

あの小娘の力はシックスが喉から手が出る程欲しがったものよだから危険性も高いのしっかり教育なさい油断しないことね

…つまり、名前の力とは。黙り込むだけの俺を、怯えた様な目で見上げるただのガキ。成る程、シックスが寵愛するのも分かるかも知れねェ。
あー、唸って帽子の淵を上げる。なるべくニコと(多分ニヤになってはいるが)笑顔を浮かべてやり、言う。

「朝飯、食ったか?」
「あ…まだ、です」
「どっか行くか。おじちゃんの奢りで」

やっと笑った。顔を輝かせた名前は、せかせかと準備を始めた。いや、ベッドメイクの前に菓子屑を拾え。
俺はソファに座って煙草に手を伸ばして…止めた。未成年の部屋では、ちょいと不謹慎か。
背もたれに深く背中を預け、よく動く名前を見た。DRに感謝しなけりゃなァ。人を見掛けで判断しちゃあいけねェ。

あの子自身が電子ドラッグなのよ

…どういう仕組みなんだか。






20110324

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