女の斜め後ろをついて歩いた。同じドアがひたすらに左右に並ぶ廊下はつまらねえ。欠伸。小さく出た空気の抜ける音は女には聞こえなかったらしい。
生理現象で潤んだ目に、ちょっとばかり先のドアが開くのが見えた。背中を丸くして歩いていた女は、それに気付いて姿勢を正した。出てきたのはジェニュインだった。こいつの前ではしゃきっとしやがる女が癪に障ったが、気にするまでもねえと思い直す。ジェニュインは俺たちを待っていやがったらしい。こっちを見てシックスとよく似た顔で笑った。
毒々しく赤い口を開く。

「あなたはもうおやすみなさいな。あの子のところへは私が連れて行くわ」

それを聞くと女は深々頭を下げてそそくさ暗闇へ消えていった。俺の側を通り過ぎるときに見えた顔は真っ青で、思わず二度見した。何をあんなに怯えてんだ、目の前の女に聞こうと思って顔を向けて、止めた。こいつ鞭持って出てきてやがった。
その鞭を何度か右手に打ち付け、ジェニュインは俺を見た。

「例の小娘のことで話があるのよ」

小娘。どう考えてもさっきの写真の嬢ちゃんのことだ。

「火火火、若い女を妬んでんじゃねェだろうな」
「馬鹿馬鹿しい、あんなガキ相手に」

野次を飛ばすと鼻で笑われた。
ついて来いと言わんばかりにジェニュインは部屋へ踵を返した。俺はこいつの部屋が好きじゃねえ。昔シックスの伝言を伝えにたった一度入ったとき、おぞましい程のおぞましい道具に溢れたその空間に気分が悪くなった記憶がある。俺に言えたことでもねえがこいつはとんでもなく悪趣味だ。
ってもこの廊下でいつまでも突っ立ってる訳にゃいかねえ。重い足を上げて踏み込んだ先には三角木馬が見えた。とっとと出て行きたい。





20110122

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