シックスに会うのは久々だった。相変わらず薄暗い部屋の中央で悪趣味な椅子に座り、シックスは俺を笑顔で出迎えた。その表情の効果音はニタリ。
挨拶もそこそこに、シックスは俺を呼び出した理由を話し始める。ごたごた言いながら差し出してきた一枚の写真には制服姿のガキがひとり、写っていた。

「一番信頼できる友人に頼もうと思ってね。だからお前を呼んだんだよ、葛西」
「…はァ」
「お前はこの子の騎士になるんだ」

ナイトだと。柄にもねェと自分でも思ったが、シックスだってそう思っているに違いない。しかしこの方の思考回路は俺なんかの想像を遥かに超している。本気で俺が騎士に適任だと思っているかも知れない。吐き気。

要するにシックスはこの写真の嬢ちゃんを新しい血族として迎え入れたが、嬢ちゃんの方が状況に順応できていないと。血族として自覚を持つ様に面倒を見ろと。何ともめんどくせえ仕事を押し付けられたもんだ。
他の面子に流してやろうと思ったが、どいつにしても嬢ちゃんがおかしくなりそうで眉間に皺が寄る。ヴァイジャヤが適任かと思やあ、あいつはまだあいつ自身がガキすぎる。とても人の面倒なんか見られねえだろう。つまり唯一の常識人の俺がやるしかねえってこった。本当に常識人かどうかは、まあ置いとくが。
写真を見て黙り込む俺に、シックスは追い撃ちをかけるかの如く言い放った。

「頼んだよ、葛西」

ちらと帽子の縁から覗いたシックスの顔は愉悦に歪んでいた。あァ分かった、やっぱりこの方は俺が騎士になんかなれやしねえことを解ってる。困惑している俺の内心を見透かして笑ってやがる。何て方だ畜生。
…とは言え逆らって人生終わらせる様な馬鹿な俺じゃねえ。写真を受け取って帽子を軽く上げて別れの挨拶をした。シックスは右手を上げた。

部屋を出ると廊下は薄暗い光で満ちていた。暗闇に慣れていた目が眩しさに細まる。ドアの側で待っていたらしい女が俺に向かって頭を下げて言った。

「お嬢様は別室でお待ちです」

お嬢様だと、大層な。





20110120

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