おいてめえら、こんなときに何こそこそやってんだ。…あ?昔話?悪ィが俺は何も覚えてねェぞ。あァ!?こんなときだけ局長ぶりやがって…くそったれ。忘れるかよ、話しゃいいんだろ話しゃ。


思えば俺はそのとき、少なからず責任を感じていた。そんな展開を想像してなかったとは言え、拾ってきたのは俺だったからだ。世話役を買って出たミツバにも、迷惑かけちまったと舌打ちが漏れる。だからこそ、お守りは慣れてねえが暇さえあればガキの面倒を見ることにした。

ガキっつーのは順応が早いモンで、一週間も経てば俺たちに慣れた。今までガキと言やあ生意気な総悟しかいなかった上女子ときたもんだから、野郎共はこぞってガキを可愛がっていた。近藤さんなんかまるで娘みてェな扱いしやがって、まァそのお陰で溶け込めたんだろうが。
よく動くようになった口を促して、色々聞き出した。歳は総悟と同じ。故郷は聞いたこともねェ地名、親は死んじまったと。最後の質問はガキに言わせるには酷な気もしたが、生憎俺たちも素性は知っておきたい。聞き出せるだけ聞き出して、顔が曇ったその後はミツバが作った飯を食わせておけば笑った。ガキは単純だ。

ガキは子供染みた遊びより、俺たちの稽古の真似事をしたがった。ミツバから逃げ出して道場に忍び込んでは野郎共の士気を削り、散々構ってもらっていた。竹刀を持ちたがるのを制すと、決まってこう言っていた。

「総悟はいいのに、なんで名前はだめなの!」

そのでかい目を潤ませりゃ、乾いた男共はたちまち落ちる。近藤さんは鼻の下伸ばして(みっともねえ)、総悟がもっとガキの頃使っていたらしい小さい竹刀を持ってきた。所謂子供用だ。顔を輝かせて竹刀を振り回すのを見て、総悟がガキに駆け寄った。何を言うのかと思いきや

「おい名前、それの使い方教えてやりまさァ」
「うん!」

嫌な予感がしたが時既に遅し。俺の脇腹に一発かましやがった総悟は子供らしからぬしたり顔で悶える俺を見上げた。こいつはガキのくせに力が強ェ。それを見てもう一人のガキがしでかすことは、目に見えている。

「てやァ」

覇気もクソもねえ掛け声と共に繰り出された突きは、俺の股間に見事入った。ついに膝をつく俺を見てきゃっきゃ喜ぶガキと、ざまあねえと笑う総悟。その後ろで感心した様な声をあげる奴ら。てめえらが甘やかすからこうなっちまったんだボケ。
俺の横に立って、近藤さんが言った。

「なかなか筋が良いぞ。もしかしたら、武士の子だったのかも知れんな」

そんなことより、総悟に毒される前に教育し直してくれ。そう思った。





20110406


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