何やってんですかィ、こんなときに。は?昔話?あー…近藤さんの頼みとありゃあ、仕方ねェや。そのときのことは俺が全ての森羅万象を完璧に記憶できる天才少年ってことを抜きにしても、よく覚えてまさァ。


突然土方のヤローが連れてきたガキはボロボロの着物を着て、ぼっさぼさの髪で姉上に抱かれていた。見ず知らずのガキを大事そうに抱える姉上を見てガキを妬ましく思ったが、ガキへの興味がそれを上回った。姉上の足元をうろうろ歩き回っていたが、ガキがこっちを見ることは無かった。

「総ちゃんは少し待っててね、男の子だから…あ、総ちゃんのお古の着物、持ってきてくれる?」

姉上が向かったのは、風呂だった。さっき誰かが入っていたから、まだ湯は温かいんだろう。姉上が扉の向こうに消えるのを見届けてから、俺は頼まれたものを取りに行った。あんなガキが俺のものだった着物を着るのは何となく嫌だったが、姉上の頼みなら仕方ない。姉上によって綺麗に整頓された箪笥を何度か開け閉めして、なるべく古いものを選んで持って行った。
姉上に洗ってもらって俺の着物を着たガキは、さっきよりか見られる格好になった。ただ俺の目でも分かるくらい痩せていて、なんつーか、苦労してきたってのが顔に滲み出ている気がした。ガキのくせに可愛げがないのはその所為かも知れない。

日差しが差し込む縁側に姉上を中心に座った。姉上はいつもと同じ優しくて耳に心地良い声でガキにいろいろ聞いていた。

「お名前は?」
「…苗字、名前」
「どこからきたのかな?」
「あっち」
「お父さんや、お母さんは?おうちはどこ?」
「…ない」

家族のことを聞いた途端その貧相な目が潤んだもんで、姉上は慌てて何度も謝りながら頭を撫でた。このガキ、姉上に迷惑かけんな。そう思ったが、何分姉上の前でそんなことは言えない。黙って足をぶらつかせていた。
暫くガキのすすり泣きだけが響いて、次第に苛ついていた頃。道場の方から近藤さんと土方コノヤローがやってきた。丁度良い憂さ晴らしだと俺が奴に斬りかかっている間、近藤さんと姉上はガキについて話し込んでいた。

「どうやら孤児みたいですね、この子…本当に身寄りも無いみたい」
「何!…よし、じゃあ俺たちが預かろう」
「「はァ!?」」

物憂げな姉上と目元が赤いガキを見て、近藤さんのお人好しが発揮されたんだろうが。その爆弾発言には流石に俺たちも手を止めた。姉上はまあいいですね、と笑うばかり。

で、肩並べて過ごす奴が増えちまった訳だ。




20110406


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