「歳三さん、」
「平気だって言ってんだろ」

年齢のことを口にすると怒られてしまう。体力のことを心配すれば機嫌を損ねてしまう。難しい人なのだ。まるで小さな子供のように見栄を張りたがり、かと思えば突然私に甘えてみたり。けれどそんなところが、どうしようもなく可愛いと思う。愛おしいと思う。

「ごめんなさい歳三さん」

だから拗ねないで、こっちを向いていて。

「…なまえ、」

畦道の両側で桜の花びらが舞い、風に踊る。私の先を歩く歳三さんがふと立ち止まって私の名前を呼んだ。前を向いたまま左手を少し体から離し、手の平をこちらに向けて待っている。これが歳三さんと私の仲直りの合図。意地っ張りなこの人の精一杯のごめんなさい。小石に躓かないよう慎重に進むと、私はその手を無視して腕を絡ませた。



私が歳三さんに初めて出会ったのは今から二十年ほど前だっただろうか、その時私は年端も行かぬ小さな子供であった。そして歳三さんは…
嗚呼そうだ、せっかくだから、



――少し懐かしい話でもしましょうか。





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