「おい、」
「…………」
「おい姉ちゃん、起きろ」
「…………」
「なあ、起きろって」

ん、人の声がする…。昨日は残業終わらせて帰ってきて、あ、わたしお風呂入らないで寝ちゃったんだっけ。もしかして化粧も落としてなかったりして、…あはは、それはとても笑えない。

「…………化、粧…?」

がばっ

化粧を落として着替えようと部屋のドアを開けたら知らない赤髪の人がいて何故か酔っ払ってて、あれ、あれ?

「おう、起きたな」
「あの、あの、…ええええ!」
「でけえ声出すんじゃねえ」

ソファーで眠ったせいでギシギシと痛む体を無理矢理起こして目を開くと、目の前に昨日の赤髪の人がいました。二日酔いで頭いてえんだ、と呟きながら、冷たい目をしてわたしを睨んでいらっしゃる(ように見えた)。それはそうだ、昨日は酔い潰れていたのだから、この人もきっと何もわからないに違いない。警戒も当然する。

「お、おはよう、ございます」
「?、ああ」

とりあえず挨拶をしてみたら、怪訝な顔をされたがちゃんと答えてくれた。悪い人じゃないみたい。

「すみません、色々と聞きたいことがあるのですが、」
「ああ、俺もだ」
「ですよね。でも先に…」
「先に?」
「…化粧、落としてきてもいいでしょうか!」



「……先程はすみませんでした」

物凄い剣幕で叫ぶと、赤髪の人、原田さんと言うらしい、は呆気に取られた顔をしてからちょっと笑って、顔洗ってこいよ、と言ってくれた。あ、笑ったら可愛い。
お言葉に甘えて身支度を整えてから原田さんの前に座った。そして、今に至る。



「もう一度聞くが、ここは日本なんだな?」
「はい。でも原田さんの暮らしていた時代ではなくずっと未来の日本」
「……ああ、嘘みたいな話だが、そうなんだろうな」

背の高いテーブルや電話機を見て、ため息を吐きながら頭を揺らした。

あれからお互い自己紹介をして昨日のことを聞いてみたのだが原田さんもやっぱりわからないらしく、二人で額をつき合わせて現状を整理してみたところ、どうやら原田さんは150年ほど昔の日本からタイムスリップしてきたらしい。

「どうやって来たんでしょうね」
「さあな、昨日はすっかり酔っ払っちまって何にも覚えてねえんだ」
「原田さん…」

お互いに気持ちの整理がつき始めると、わたしを見る目から警戒が消えてやんわりと微笑みかけてくれるようになった。でも混乱していることにかわりはなくて、現に原田さんはとても悲しそうな目をしてる。

「……いつ帰れるかもどうやったら帰れるのかもわからないんですよね」
「そういうことだ」
「…よかったら、その方法をここで一緒に探しませんか?」
「………いいのか?」
「もちろんです。わたしにもわからないことだらけですけど」

だから一緒に考えましょう、と言うと、出会ってから一番の笑顔を見せてくれた。

「ありがとう、なまえ」





『はじめまして』




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テーマ「人外ファンタジー」
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