「"クイズ! カグラーズハイパーゴールデン神風アタックチャンス"のお時間がやってまいりました!」
「‥は?」
「司会は私。『え、休日? 俺の場合はいつも休日だぜ‥』‥な、悟天神楽クスです」
「何言ってるの? 神楽ちゃん」

いきなりクイズの時間がやってきた、とおもえば。番組名‥というよりネーミングセンスが中2くさい。尚且つ『神風アタック』て、ドラ○ンボールかよ! な感じだし。司会者の紹介、もとい愚痴は痛い程伝わってくるし。司会者の名前が『悟天神楽クス』て、ドラゴン○ールかよ! な感じだし。
まあこの時々突発的に来るクイズ番組擬きは、ろくな問題が出てこない。大抵『私は今、何を考えているでしょう』だ。しかも飯関係のことを言えばだいたいは当たる。卵かけご飯と言えばさっきより当たる確率がぐっと高くなる。そういえば最初に大抵と言ったのは、ごくたまにイライラからくる愚痴をクイズにし、遠回しに仕事(という名の給料)をよこせとせがむから。

「さあ、最初の問題‥と言いたいところですが! なんとラスト問題です! これに正解すると、100神楽クスを差し上げます!」
「最初にして最後かよ、それに悟天はどこいった。彼奴GTシリーズはプレイボーイかましてるぞ」
「まあまあ。今日は何時になくやる気なんですし、やってあげましょうよ」
「では! 問題です!」

俺はソファーでジャンプを読みながら寝転がっていた姿勢から、ジャンプをテーブルの上に置き座った。お茶を入れてきた新八も、湯呑みをテーブルに置いた後俺の隣に座る。横目で二人を見ると、やっぱりどこか楽しそうな顔をしていた。まあ俺も適当に楽しむとしよう。
コホン、と咳払いをした神楽。いや、悟天神楽クス。それを皮切りに張りつめた空気へと一瞬で変わった。まるで大きなクイズ番組で賞金100万円がかかっているラストみたいだ。

「ある風船は浮かんでも、何時間かすると地上に落ちます。が、ある風船は何時間も浮かび続け、最終的には空高くいってしまいます。それはなぜでしょーか!」
「あー‥、あ?」
「なぜ、と言われても。」
「時間は無制限! さあ、お考えください!」

張りつめた空気が一気に崩れた。それは問題を言われたからではなく、問題の内容があまりにも間抜けだったから、だ。
しかし、やはりクイズといったら何が何でも勝ちに拘りたいわけで。新八も俺も必死に考える。だが当たり前、且つ常識範囲な答えしか浮かばない。きっと悟天神楽クスのことだ。どこかにひっかけがあるに違いない。万事屋の居間の空気が、いつしかDEATH NOTEの心理戦のような空気になっている。畜生‥! 悟天神楽クス、もとい月め。さっさと正体を現せ!

「何か違う、とか?」
「おお! ダメ眼鏡が一歩リード! さあ、もじゃ銀は抜かせるでしょうか!?」
「おい。もじゃ銀、てなんだよ」
「ダメ眼鏡には注意しないんですか、あんた」
「ヒント、ヒントくれよ」
「ヒントなんてものは、私の辞書の中にはありません! さて、どうする! もじゃ!」

勝ち誇った顔で見下す、かぐ‥いや、月。今ならLの気持ちがわかるぜ‥! 肩を持つぜ、L! さあ、今なら月に打ち勝つことが出来るぞ! ここまできちゃ言ったもん勝ちだ。大きく息を吸い込んで、脳内にある化学てきな物質を挙げる。

「酸素だ! それか空気! あとは銅! まさかのイオン! プラズマクラスター! はシャープだけ! ヘリウムガス(裏声)! ラドン! てなんだ! 酸化! 現金還元セール! やっぱり銀時のAgで!」

よく一気にこんな多くの化学物質が出たものだ。我ながら感心する。ぜーぜー、と俯きながら息を整える。ちらっと二人の顔色を伺うと、ぽかんと口をだらしなく開けて俺を見ていた。ふふ‥! いつもの銀ちゃんじゃない、ということがわかったか! ガキんちょ共め!

「もじゃもじゃパーマさん。」
「‥もうくるくる以外の、何者でもねェのな。」
「正解です! 100神楽クスゲットおお!」
「まじでかァァア!」


−−−−−−−−−−



適当に言ったからか、俺も当たるとは思わなかった。というより正解した実感がない。それに100神楽クス、て悟天神楽クスに100酢昆布をあげる意味らしく強請られた。あげないけどね! そんな紛らわしい言い方をしてる神楽クスがいけないんだもんね!
さて。今は実際にヘリウムガスを入れた風船が、どこまで飛ぶのか実験する。わざわざそのために万事屋の近くにある、河川敷まで来た。畜生、午前中だとはいえ冬だからか肌寒い。たしかにヘリウムガスで飛ぶのは知っているが、仕組みや理由などは知らない。

「赤い風船が『よく飛ぶゼ! 悟天神楽クス風船』で、白い風船が『わしゃわしゃだゼ! もじゃ銀風船』アル」
「お前、ちょっと悟天神楽クス気に入ってるだろ」
「しかも僕いなくね? クイズ外れたから?」
「新八は外れたけど、おしいを出したネ。だから目元に眼鏡を描いたアル」

たしかに赤い風船には神楽、白い風船には俺の似顔絵らしき絵が描いてある。そこそこ特徴を掴んでいて、結構似てる気がした。だが神楽の目元にも。俺の目元にも、眼鏡があった。ぷぷっと口を手で塞いだが思わず笑ってしまった。新八は俺のそれを見て睨む。

「いくヨ!‥さーん」
「にーっ」
「いーち!」
「ニュース、ゼーローっ!」

掛け声が最終地点(ニュースゼロ)まで到達すると、神楽はお天道様に向かって腕を上げ持っていた風船手を離した。すると風船はふわりふわり、と自由気儘に飛んで行く。三人とも空を仰ぎながら口を開けて、ある風船を見ていた。そう。赤い風船を。

「というわけで、赤い風船が一番飛ぶアル」
「理由は、なんだよ」
「ヘリウム。というのは空気中の中で軽い物質なんですよ」
「は?」
「空気中には大まかですが窒素、酸素、それと二酸化炭素があって、それぞれにはちゃんと重さがあるんです。だけどヘリウムってどの成分より軽いから浮く。」
「あー‥、そうなの?」
「でもよく神楽ちゃん知ってたね」
「教育番組を見たヨ。結構タメになったアル」

納得、というより神楽がそういう知識を知ってて驚いた。の方が感情的に大きかった。それがあったからか、俺より賢くなってんじゃねェよ!とも思ってしまった。だが今はそれどころじゃない。あの赤い風船が何処まで飛ぶのかを見ていたかった。きっと二人も同じ気持ちだろう。

「俺、死んだらあの風船のとこ行くわ」
「あたしも今それ思ったネ」
「僕も思いました」
「‥てことは、あの世まであんたらと一緒ですか」
「一緒でいいアル、とりあえず悟天神楽‥‥クリックと居れれば」
「名前忘れんな、クリックてなんだよ」


ヘリウムを詰めて飛ばす


ふわりふわり、そんな感じで来世も一緒
企画:11cm様に提出

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