06


それからというもの、仁王の部活がオフの日には必ず二人で会うようになった。

テニス部の休みは基本的に日曜日しかない。それは夏休みに入っても同様だった。

貴重な休日を使わせるのは申し訳ないので、たまに私のほうから理由をつけて断るときもあった。そういうときは決まって夜に電話がかかってきて、30分ほどたわいもない話をしてから通話を切る。

そしてその後に律儀に送られてくる「おやすみ」というメッセージを見るたび、愛しいような、でもどこか憎たらしいような気持ちになった。


会う場所は、ホテルのときもあれば、親がいなければ私の家のときもあった。
毎回セックスだけではなく、デートみたいな感じから始まるところが、仁王雅治という男の末恐ろしさを感じさせる。それでもこの関係に名前をつけるとしたら、やっぱりセックスフレンドと言うのが正しいんだろう。




そんなこんなで、あっという間に1ヶ月半が過ぎた。

今年の全国大会は優勝したと、さっき連絡があった。明日はオフで、部活のみんなと出掛けるらしい。

いやにあっさりしている。
でも仁王が嬉しいなら私も嬉しい。

優勝おめでとう!明日楽しんできてね、とメッセージを送ると、すぐに既読になる。
けれど、返事は返ってこなかった。


23時頃、お風呂から出た後に仁王から着信がきていることに気がついた。
折り返すと、6コール目で「もしもし」と仁王の声が聞こえた。


「あ、もしもし?電話した?」
「した」
「どうかした?あっ、それはそうとお疲れ様!今日暑かったし疲れたでしょ。この炎天下でほんとすごいよねー」
「おー」


どこか間延びした声で、仁王が答える。
何か用事があるのかと思い続きを待ってみたが、仁王は無言のままだった。


「仁王?どうしたの?」


心配になって声を掛けると、仁王は「あー」とか細い声を出す。しばらくして、一言呟いた。


「すまんなまえ、会えんか?」





幸い、今日は父親が出張でいない。
急いで髪を乾かして必要最低限のものを持ち、バタバタと階段を降りていく。

あれあんたどこ行くの?と言う母親に、えりちゃんがフラれたらしくてピンチだから慰めてくる、もしかしたらそのまま泊まるかもしんない、とそれっぽいことを言って家を出た。
親に嘘をついてまで外泊しようとするのは初めてだ。辻褄合わせのために、えりちゃんには秒でメッセージを入れておいた。




待ち合わせの公園に着くと、ブランコに座っていた仁王が私を見つけて手をあげた。


「も、何してるのこんなとこで」
「なんとなく。すまん、こんな時間に」


仁王は立ち上がって、急に私を抱きしめた。
後ろでブランコがキコキコと音を立てている。

こんなことは初めてだ。
首筋に顔を埋めた仁王が小さな声で「移動するぜよ」とつぶやいた。






「んっ…や、待って、にお、」


ラブホの部屋の扉が閉まるなり、仁王はいつもより乱暴にキスをした。
侵入してくる舌はいつもより熱い。

ボタンが外され、まだ玄関だというのにあっという間に下着姿にされてしまった私の胸に顔を埋める。

性急に下着が取られ、徐々におりていく舌が唾液を含ませてそこに辿り着くと、意図せず体が跳ねた。

喘ぐことしかできなくてたまらず仁王の髪を掴むと、秘部にあてがわれた舌の動きがより一層激しくなる。
指も挿入されて、快感が全身を走った。


「あっあっ…仁王、だめ、あっ」


足に力が入るのを見て、仁王は余計に音を立てて秘部を舐め上げた。かつてないほどに舐められて、おかしくなりそうだった。
まだ数回しか体を繋げていなくても、彼は既に私の弱いところを知り尽くしている。仁王がやろうと思えば私など、こうしてあっという間にどろどろにされてしまうのだということを、初めて知った。


「やだやだ、イく、イく…っあ、待って、…ああっ、いや、あ」


自分のものとは思えない甲高い声が出て、同時に強い電流のような快感が全身を襲う。どろり、と秘部から愛液が流れて内腿を伝うのがわかった。

仁王は、息も絶えだえな私を抱き上げると、そのままベッドへと沈めた。


避妊具を手早く装着した仁王は、私の脚を大きく開かせた。いつもはもっとゆっくり、私のペースに合わせてくれるのに、今日は余裕が無さそうだ。

扇情的な瞳が私を捉える。
私から視線を外さないまま、仁王の先端が押しつけられる。それだけでも気持ちよくて、だらしなく声が漏れた。


「あー…加減できんかも」


腰を押し進められて、その異物感と重量感に息を飲む。首に回すようにと手を取られ、指示通りしがみつくと「いい子」とキスされた。
律動に合わせて自然と喘ぎ声が出る。

結合部から卑猥な音が聞こえてきて、思わず顔を背けた。が、仁王の右手に戻されてしまう。


「俺を見んしゃい」


言うことを聞くしかなくて、恥ずかしくて仕方がないのに仁王の目を見つめたままひたすら喘ぎ続けた。
仁王は満足そうに、時折快感に顔を歪めながらも動く。

ほどなくして、仁王が膣の奥で達した。
イく直前、首にしがみついていた両手を外され、甘く手を繋がれた。

達した後も、息を整えるまで二人でそうしていた。




しばらくして起きあがった仁王は、後処理をしてから「風呂行こ」と手を差し出してきた。

湯船を張って、乳白色の入浴剤を入れる。
そんなのいらんと言われて、だって透明だと恥ずかしいからと答えると、もう隅々まで見たのに、と笑われたので尻尾みたいな髪の毛を引っ張ってやった。

仁王に後ろからハグされる形で湯船に浸かりながら、私たちは特に何も喋らなかった。
気恥ずかしいのもあったし、何より仁王の様子が明らかにいつもと違うので、ここで余計なことを言ってはだめだと思った。


お風呂から出ると、仁王がドライヤーで髪の毛を乾かしてくれた。湯船の中で、今日お風呂2回目なんですけど?と伝えたのが効いたらしい。
お返しに仁王の髪の毛も乾かしてあげて、並んで歯を磨いて、二人でベッドに横になった。

最初腕枕をしてくれたけれど、疲れているだろうからと途中で私から腕枕を外した。
ちょっと残念そうな表情を浮かべたので、仕方なく代わりにぴったりと寄り添ってあげる。


「ん、悪くないぜよ」


そう呟いて、仁王は目を閉じた。

これまで、たとえ事後でも横になってからこんなにすぐに眠ったことはない。
それでも、今は何も言わずに自分も目を閉じた。

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