21


「や、あ、」


指が私の中に入ってくる。
中をとんとんと突かれて、口内も犯されて、頭が沸騰しそうだ。


「あ、あ、またイく…ん…っ」


すぐにまた絶頂を迎えてしまい、全身が震えた。
仁王は動きを止めて、私の胸元に唇を寄せる。


「2回目」


左胸の上の方に一つ、右胸の外側に一つ。私の肌に赤い痕がついている。
仁王は官能的に笑って、舌をゆっくりと絡ませてくる。唾液が飲み込みきれずに口の端を伝った。


「あ、も…やだ、あ、おかしくなっちゃう……あっ」
「気持ちよくて?」
「きもち…い……あ、またきちゃう…….ん、やぁ、んっ」


イく寸前で、仁王はずるりと私の秘部から指を抜いて、意地悪く微笑んだ。
迫り上がってきた熱が行き場をなくして、私は仁王を切なく見つめる。


「あ、はぁ…っ。いじわる……」
「ご存知の通り、俺は意地悪なんじゃ」


イキたい?と囁く仁王に小さく何度も頷く。


「挿れてよお…。雅治おねがい、イかせてくださ…い……」
「……酒飲んでセックスするのはたまにでいいぜよ」
「なん、で?」
「毎回こんなだったらもたん」


正常位で挿入され、いまだ慣れない異物感と質量に思わず息を呑む。


「なまえはいつもこのときに泣きそうな顔する」
「そ、う?」
「高2んときからずっと」


仁王も同じことを思い出していた。
その事実に嬉しくなって、自分からキスをした。 





「ん……あれ、仁王」
「おー、起きたか」


時計を見ると、すでに時刻は5時を回っていた。
仁王は珍しく起きている。いつもなら、終わったあと速攻寝てしまうのに。


「寝れないの?」
「さっきのエッチななまえちゃん思い出しとった」
「何言ってんの!」


枕をばふっと投げる。
寸前でキャッチして、仁王は薄く笑った。


「なまえちゃんが寝てる間、いろんなこと思い出してた」
「いろんな、って?」
「中3の夏休み明け、500円玉がテープで机に貼ってあったこととか」
「あ、あれは…直接返せなかったから仕方なくて」
「あとは、はじめて家行ったら誰もいないって言われてビビったこととか」
「だってお母さんたちがいるとうるさいから…、別に深い意味は無かったんだってば!」


どの日も、仁王との思い出は今でも鮮明に思い出せる。


「だいたい音楽苦手なのに、仁王が音楽選択にするから」
「音楽選べばなまえちゃんがいると思って」
「え、そうだったの?」
「なのに何か美術選択にしとるし」
「いや私は、仁王は音楽苦手だから、それなら美術選ぶかなーって、思って…」


そこまで言って、お互い顔を見合わせる。
横向きに寝返りを打った仁王がフッと笑う。


「すれ違いか」
「フフ、すれ違いだね」
「まだあるぜよ。なまえちゃんが失踪したって柳生たちに言われて帰国したら、空港でなまえちゃんがフツーに立ってたこととか」
「あ、あのときはごめんなさい……」
「人生で一番焦ったかも」


普段あまり思い出話をしない仁王が、やっぱり今日は珍しい。

付き合いが長いせいだろうか。
そんな彼を見ていたら、何となくわかってしまった。

何かを考えて迷っているときの仁王だ。


「今、何考えてる?」
「いや、何も」
「…とりあえず言ってみてよ。一人で考えたかったら言わなくてもいいけど、仁王のことだからもう一人で充分考えたんでしょう?」
「お前さんは相変わらず物分かりが良いのー」
「うん。仁王雅治の彼女だからね」


仁王は私を抱き寄せる。
仁王の少し長い髪がくすぐったい。


「先週、ゼミの教授にフランスの大学に行かないかって言われた。こっちじゃ出来ないことが向こうなら出来るからって」
「うん」
「でも、一度行ったら何年かかるかわからんし、そしたら、」
「うん。行きなよ」


即答する私の顔を覗き込んだ仁王は、驚いた顔をしていた。
仁王が懸念していることはよくわかる。


「仁王、私ね。ライターになろうかなーと思ってるの。それって別に日本じゃなくても出来るじゃん?」
「……なまえちゃんには一生勝てん」
「ふふ、でしょ?」


仁王雅治の横にいるには、何でも受け止められる器量が無いと。
そう続けると、ベッドに横たわっていた仁王がおもむろに体を起こした。

喉でも乾いたのかな、と見ていると、仁王は不意にこちらに視線を移した。



「そーか。じゃあ結婚するか」
「……えっ?!」



卒業式前のプロムの日を彷彿とさせるような、自分の素っ頓狂な声が寝室に響いた。

間接照明が薄暗く光る部屋の中で、仁王は何でもないかのように薄く笑っていた。



「なまえちゃん、俺と結婚してください」



照明の光が仁王の横顔を照らしている。
手の甲にキスをされ、恥ずかしくなって布団を手繰り寄せた。


「い、今言う?!」
「こーゆーのは早いとこ言わんと」


で?答えは?と仁王は意地悪く笑う。


「私がここで、いいえって言ったら仁王はどうするの?」
「んー、あの手この手で首を縦に振らせる」
「……こわすぎ」


よろしくお願いします、と小さくお辞儀をした。

仁王は満足そうに笑うと、私に覆いかぶさる。


「な、なに…!」
「記念日じゃし、もっかいしとこうと思って」
「ちょっと、さっき何回したと思って…もー仁王!」
「仁王なまえになるんじゃし、やっぱりいい加減に名前で呼ばんとな?」
「……みょうじ雅治になるかもしれないじゃん」
「それも悪くないぜよ」



4年前のあの日から、ずっと思っていた。

私はこの人から逃れられない。
きっと、ハマってしまう。



ならば、とことん踊ってみよう。

この仁王雅治という男の手の中で、ずっとずっと。





end...

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