16


目が覚めて、窓の外を確認する。外はまだ暗い。
時計を確認すると、針は深夜3時を指していた。

横で小さく寝息を立てて眠る仁王は、上半身裸のまま布団にくるまっている。
眠っている顔は少しだけ幼い。鎖骨に指を這わせると、くすぐったいのか寝返りを打ってそっぽを向いてしまった。


あれから二人して夢中になってしまって、夜ご飯もろくに食べずに何度も体を繋げた。
どうやらいつのまにか寝てしまったようで、気がつけばこの時間になっていた。



とりあえずそこらへんに落ちていたTシャツを着て、布団から抜け出す。
立ちあがろうとすると、背後から仁王の手が私の手首を掴んだ。


「……どこいくん」
「ごめん仁王、起こした?」
「……なまえちゃん、エッチのときしか下の名前で呼んでくれん」
「だ、だってまだ慣れなくて…」


腹減った、と呟く仁王に同意して、二人で布団を抜け出た。
仁王が、タンスから自分のTシャツとズボンを引っ張り出して手渡してきたので、着替えようと着ているものを脱ぐ。


「ちょい待ち」
「え、なに?」
「いや、焼き付けとこうと思って」


私の下着姿をじーっと見つめる仁王の顔は、寝起きというせいもあってか真剣な顔そのもので、ふざけていないのがむしろ恥ずかしい気持ちにさせられた。

何言ってんの、とTシャツを着ると、仁王は「おー」と感嘆の声を上げた。


「なまえちゃんが俺の服着とる」
「…どう?」
「そそる、エロい」


机の上に置いてあったミネラルウォーターを一気に飲み干した仁王は、飲み終わると手で口元を拭った。
なんとなくそれに見惚れていると、仁王は空のペットボトルをぽいっと後ろへ投げ、立っている私の両肩を掴んでぐいぐいと後ろへ押した。


「え、ちょっと仁王、下にご飯食べに行くんじゃ」
「んー、これが終わったら」


隙間から入ってくる仁王の手が背中をすべっていくのを感じながら、仁王のシャツの裾を掴んだ。






「仁王のせいでもう4時だよ」
「この時間に食べるラーメンは美味いぜよ」
「それはそうかもだけど」


キッチンに二人並んで、仁王オススメだという袋麺を茹でていると、仁王がひょこひょこと私の後ろに回った。
振り返る間もなくギュッと後ろから抱かれて、仁王は私の肩に顎を置く。


「なんか…こういうのが一番恥ずかしいかも」
「そーか?」
「なんでだろ、彼氏感があるからかな?」
「もっと彼氏っぽくしちゃろーか?」


顔を後ろに向かせて顎を軽く持ち上げた仁王は、私の唇に口付ける。


「ん……もー!そろそろ火止めないと…」
「もーちょい」


しばらくされるがままだった私は、次第に麺がのびる心配が勝ち、結局3分後には仁王の脇腹に肘鉄することとなったのだった。


「麺のびてる、仁王のせい」
「これはこれで悪くないじゃろ」


それもそうかも。
仁王に言われるだけでそんなふうに思ってしまうのだから、恋とはおそろしい。


「なまえちゃん、あとで一緒に風呂入ろ」
「やだよ、なんかまたそういうことになりそうだし…」
「へー、期待しとるん?」
「し、してない!」


してなきゃそんな言葉は出んよ、と笑う仁王を睨む。
入らんの?ともう一度聞かれて、麺を飲み込んでから入らない!と答えた。


食べ終わった仁王は立ちあがると、バスルームへと向かった。ザーと水が流れる音が聞こえる。
ほっとしたのも束の間、バスルームから私を呼ぶ声がした。

どうやらシャンプーの詰め替えが欲しいらしい。
ドア越しにどこにあるかを聞いて、それらしいものを持ってくると、ドアが少しだけ開いてにゅっと手だけ伸びてきた。

思えば、察しの良い仁王が詰め替えを忘れるなんてことがあるはずがなかった。

渡そうとした手をぐいっと掴まれ、あっという間にバスルームに引き込まれて、気がつけば仁王の腕の中。


「つーかまえた」


ペロリと舌を出す仁王は、腕の力を緩めない。私を解放してくれる気はまったく無いらしい。

ふたりしてシャワーの水を頭からかぶりながら、私たちはまた深くキスをした。






ふたりしてシャワーを浴びて髪を乾かしたあと、眠気の限界が来た私を仁王はひょいと持ち上げてベッドまで運んでくれた。
彼に腕枕される日がくるなんて…と思いながらも、仁王の腕の中ですぐに寝落ちてしまい、気がつけば昼前だった。


「痛たた…体バキバキなんだけど…」
「俺は平気じゃ」
「そうでしょうね…」


仁王の体力には昨日散々驚かされたのだ。


「私そろそろ帰らなきゃ」
「ん、送る」
「大丈夫!お父さんがたぶん帰ってきてるし…」
「…あー、尚更行く」
「ううん、当日だけど連絡入れたから、そんなに怒られないはずなの。だから平気」
「頑固な子じゃのー」


バタバタと支度をする私を、頬杖をついて眺める仁王の顔は、見たことがないほど穏やかで優しい。
おそらく、私の口角も上がりきっているのだろう。



玄関で靴を履いていると、その様子を後ろで壁にもたれながら見ていた仁王が口を開いた。


「明日、復学の手続きするために学校行く」
「えっそうなの?!」
「まーその前に、親に色々予定がずれたことを言わんといけんけど。まあいけるじゃろ」


親も慣れとるし、と加えるのを聞いて、仁王の親御さんの心中を慮ってしまった。


「手続きしてすぐ帰るだけかと思うと味気ないぜよ」
「…つまり?」
「なまえちゃんを一目見られたらいいのになーって」


はっきり明言しない仁王は、やっぱりずるい。このままではずっと仁王のペースだ。
しばし見つめ合ったあと、見られるといいね?と笑って仁王の家を後にした。


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