現実と言ノ刃
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警報が耳元で鳴り響くような耳鳴りがする。鼓膜が破れそうだ。煩い、少し静かにしてくれないか。



「あぁあ!くっそ馬鹿やった!」



…煩い。そんな近くで怒鳴ったら私の耳がイカれる。というかこの声は誰、だ?

けたたましい怒鳴り声で意識が浮上した私は少し痛む頭を押さえて目を開けた。そういえば、私は祠の前にいたはず。そして…倒れた…倒れた!?

そこまで思い返して勢いよく体を飛び起こす。そうだ、確か変な声が頭に響いてきた。

そして全く整理のつかない頭に更に追い討ちをかける事態が発生した。



「…あ。目覚めたか。」

「誰だお前は……!」



眼前にいる存在を私は知らない。一言でいうなら謎。中性的容姿に和服、そして現代でも古代でもあり得ないであろう容姿。だけど感じ取れるただ者では無い空気。怪しむには十分だ。

誘拐か? いやそれなら私は縛られたりと自由を奪われていてもおかしくない。今の私は何の拘束もされていない。

得体の知れない存在に、頬から冷や汗が一筋伝った。



「そんな警戒するなよ。俺は別に危害を加えるつもりは無い。」



口調から察する男だろうか。男は両手を肩まで上げてひらひらと振って危害を加えないという意思を伝えた。

そんな気の抜けた態度に僅かに緊張の解けた静奈は肩の力を抜いた。肩の力を抜くと色々と気づくことがあった。

まず、自分のいる空間。お決まりの展開のように辺りは真っ白。本当に何も無い。どこまで続いているのかわからない白にゾクリと背筋に冷たいものが走った。

そんな静奈を知ってか知らずか男の声が現実に引き戻す。



「…あぁ、そういえばお前には説明しなきゃいけないことがある。」

「…何だ。」



その一言で再び静奈の周囲に張りつめた空気が漂った。

警戒心の固まりだな、と男は内心感心しながら淡々と何てことの無い日常を語るかのように、もったいぶることなく結論をアッサリと言った。



「…お前は俺の手違いによってここ、…わかりやすく言えば異世界に連れてこられた。」

「………、…は?」



今はまだわかっていないだろう、これから始まる現実を受け止める苦行を。

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