現実と言ノ刃
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あの後、落ち着いた私は何やら煌希の仲間とやらに会うべく外で待たされているわけだがいかんせん寒い。なんだってこんな寒空の中一人でこんな空き地で待たなきゃならないんだ。寒い、とにかく寒い。

帰ってきたら文句の一つでも言ってやろうと身を縮ませていると。



「そっこのおじょーさんやーい。」

「…ん?」



なんとも間の抜けた声が私の鼓膜を刺激した。この空き地には私一人。つまり私を呼んでいるのだろう。振り返るとそこには長身の男が私の方に向かって歩いてきていた。

私的なことだが、私は人を見た目であまり判断はしないように心がけている。但し、苦手というかあまり関わりたくない外見の者だっているわけだが、まさに私の元へと歩いてきている人物はそれにピタリと当てはまる。



「…へーぇ…なるほど。」



一定距離で足を止めたその男はまるで品定めするような目で不躾な視線を寄越す。上から下まで見る、不愉快な目。思わず睨み付けるが軽くかわされたような気がした。

一歩、近寄られる。



「そりゃーアイツも…あー納得。」

「…誰だお前は。」

「オレ? オレはただの通りすがりとでも思っといてもらえればー。」

「ただの通りすがりにそんな不愉快な視線を送られたんじゃたまったもんじゃないな。」

「ハハッ…いーねぇ…。」



瞬間、一気に距離を詰められる。予想外の早さに身構えるのが遅くなったのが命取り。手首をそれなりに強い力で掴まれて、離れない。



「さーて、ちょっとお話しようぜ?」

「…馬鹿か。」

「は、っ!?」



グルッと体を回してそのまま投げる。勢いよく叩きつけられた男の体を押さえ込んでそのまま手首を捻り上げた。何が起こったのかよくわかっていない男をさてどうしてやろうか。



「っ…てぇ…話通りってか…。」

「…は?」



意味のわからないことを口走り出した男を不審に思って話を聞こうとした途端。



「雷軌(ライキ)てめぇなにして……はぁ!?」

「…煌希?」

「…なにしてんだてめぇら…。」



どうやら、知り合いのようだ。なんとも言えない表情で私と男を見る煌希に、というか煌希の姿にほっとして力を抜いたのが間違いだった。


突如、反転する視界。



「…なるほど、こりゃあ中々の上玉ってか。」

「っ!」

「おい雷軌やめろ!」

「はーぁ? 何青ざめて、ってか押し倒しちまえばこっちの、」

「っ退けぇえ!」

「お、ぉ!?」



ダァン! 盛大な音と共に男は地に伏せた。と同時に手首を捻りあげる。本気で手首折ってやろうかこの男。苦悶の声が聞こえるが知らん。

そして聞こえた煌希の大きなため息が呆れを含んでいた。生憎、気分は最悪だ。急降下だ。なんだってこんな寒い中待たされた挙げ句煌希の知り合いと思われるやつに押し倒されなきゃならない。ひくつく米神が怒りを助長させてるような気さえする。さて、煌希にどう責任をとってもらおうか。

捻り上げた手首はそのままに思いっきり煌希を睨み付けてやれば罰の悪そうな顔をされたがそんなこと気にしてられるか。



「…煌希、誰だこの軽薄な男は…!」

「…わりぃ、ソイツはオレの…あー、相棒だ。」

「は、相棒?」



これが? この軽薄且つ煌希と正反対そうな男が? というか相棒とはなんだ。

相棒、その言葉がこの男に与えられていることに何故だか心に影がうっすらと落ちたような気がした。

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