現実と言ノ刃
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どこからか変わった音が聞こえる。ざわざわと木々の擦れる音。そして肌を刺激する北からの強い風…。
「…寒い。」
一層強い風が吹けば身体中に鳥肌がたった。ぼんやりと覚醒し切っていない頭を一瞬で覚醒させたのは私の目に映る辺り一面の、森だった。
目を見開いて辺りを確認するとどうやら私は木にもたれ掛かっていたらしく。決して開放的では無い森にすぐに状況確認することを選んだ。
辺りは森一面。勿論ここがどこか検討もつかない。何かの気配はあるから探せば食べ物はあると思う。
「…何だこのポーチ。」
ふと地面に目を向けると腰ポーチがあった。何か手がかりになるものがあるかも知れない。そう思って中身を見ると、何やら不思議と色々詰まっていた。
「…ナイフにマッチにタオル…と…あとは…。」
これは私にサバイバル生活でもしろと。野宿でもしろと言っているのか。この小さいポーチに期待はしていなかったがテントは入っていなかった。
いや一応他にもある、けども…実用性がわからないというか何というか。
彩天の気遣いだろうか。有難いができればこの状況を打破できるものが入っていてほしかった。
「とりあえず町に出ないとな…。」
本音を言うと心細い。見知らぬ土地で単独行動なんてそりゃ怖い。知っている人がいないし、小さい時のように森を冒険なんて無謀なことを今になってするとは思ってもみなかった。
しかも信じたくはないけど、ここは異世界…ポケモンの世界。何が起こるか私にはサッパリだ。
『……おい、あれ見ろよ。』
『あぁ…人間だ。』
「っ!?」
突然の不思議な声に勢いよく振り返ると、そこにはいわゆるポケモンという生物だろう。何か、虫の形態をした生物がそこにいた。
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