現実と言ノ刃
最近の出来事だ。たった一人の身内であった祖父が亡くなった。だからもう私に身内はいない。両親は物心ついた時にはもういなかったから。
あの時は、柄にもなく大泣きをした。涙が本当に渇れるんじゃないかってぐらい。
それでも、私の周りを取り巻く日常は何一つとして変わっちゃいないのだ。
「今日、は…月曜日か。」
本来なら、学校へと行く週始め。しかし、私は曜日を確認しただけで自室から動こうともしない。起床しただけだ。
あぁ、最後に学校に行ったのはいつだったか。日にち感覚が狂ってもう覚えてもいない。いや、思い出そうとも思わないが。
「…ダル。」
正に無気力状態。祖父が亡くなってから、更に色褪せてしまった日常。
しかし、そんな私にも身体に染み付いている日課がある。それをまだ起きてから行っていない。
気だるい身体に鞭を打って、準備を始める。毎朝の日課。
「…行くか。」
首を捻って音を鳴らすと、冷えた廊下を歩いて目的地へと向かった。
ペタペタと、冷たい廊下を裸足で歩くと目的地に近づくにつれて、軋む音がする。その音を聞くと少し心が緩む自分がいることに気づき、心中で毒づく。
(腐っても門下生、か。)
私の祖父は道場の師範だった。高齢ではあったものの、まだまだ師範として活動していたのにな。
その道場で師範の孫である私も鍛練を積んでいたわけだ。
さぁ、そろそろ離れにある道場だ。
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