現実と言ノ刃
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センターの大部屋を煌希がとってくれたお陰で今は暖房の効いた部屋に三人で座っている。ちなみに女好きはさっき強制的にボールに戻された。何をしたかは察してほしい。
「…それで、何で私に会わせようと思ったんだ?」
「……。」
「言わなきゃわからないぞ。」
真一文字に結ばれた唇が開くことはなく、黙りを決め込む煌希は気まずそうな表情だ。理由がない、ということはないだろうがそんなに言いにくいことなのか?
煌希をじぃっと見つめているとあからさまに視線を反らされたので流石にそれには苛立ちを覚えたが。
「…ねぇ、煌希とどういう関係?」
「は?」
「だから、煌希とさぁ、どういう関係なの?」
黙りな煌希の代わりに口を開いた夢依の目はしっかりと私を捉えていた。まるで全てを見透かすようなその目に思わず体に力が入る。
これは、言っていいものなのだろうか。幼馴染みだと。いやでも煌希がこの世界の人でないことを知らなければ問題はないのだろうけど、それでも。
「…もしかして、煌希と同じ?」
「っ!…何の、ことだ。」
「え、煌希と同じところから来たんじゃないの?」
ザワリと総毛立った。何で、どうしてわかった。私はそんなこと一言も漏らしてないのに。
ドクドクと心臓の音が相手に聞こえるんじゃないかと、そんなことあり得ないのに胸元をぎゅっと強く掴んだ。落ち着け、この世界に連れてこられてから動揺してばかりじゃないか。落ち着け、落ち着け…。
一息ついて、ふと気づく。煌希と同じ、と知っているのならコイツ、煌希が違うところから来たことを知っている?
「…あー面倒だなお前らは…! ったく、わかってんなら聞くんじゃねぇよ、静奈もオレと同じだ。」
「あーやっぱり? じゃあ煌希、この子に気を使ったからあたしを呼んだの?」
「は?」
その言葉に気をとられて、煌希が冷や汗を流したことに気づくことができなかった。
「え、この子と同い年っぽいあたしと会わせてーなんだろ、安心? させたかったんじゃないの?」
「…そう、なのか?」
「…知らね。」
「煌希、言え。」
強く咎めるような口調にすると、舌打ちを一つ、渋々といった態度でようやく口を開いてくれた。
「…女とも話したいかと思ったから、そんだけだ。」
「煌希そんな優しいキャラしてたっけ。」
「るせぇよ!」
あぁ、私ってこんな単純だったのか。わざわざ私のために夢依を呼び出したことがそうか、こんなにも。
自然と口元が綻ぶのがわかった。春風が心の中を擽るように抜けていくような感覚、きっと今の私は幸せ者なんだろう。
そう、幸せなんだ。だからミシミシと軋みを立てる心を見なかったことにしたんだ。
「お前は…ほんっと…甘やかしたってなにもないんだからな…!」
その時の私は、だらしなくにやけた顔をしていたことだろう。
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