現実と言ノ刃
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青、藍…。ふわりと舞う長い髪の毛が羽のように風に揺らされる。まるで深海に陽を透かしたみたいだ。ゆら、ゆらり。風に揺れる度にその色が淡くなっていくような錯覚に陥った。
ぼんやりと私を見据えるそのどこか濁っているような、澄んだ茶色の瞳は意思を宿しているのだろうか。

人間離れした色彩は、おとぎ話に出てくるような容姿だった。



「……誰?」



透き通った、細い声。だけどどこまでも届きそうな、僅かに芯の通った不思議な声。

小首を少し傾げて私を見つめるその少女に少し居心地が悪くなった。



「ご苦労さん、真琴。」

『…あぁ…。』



どこかぐったりとしている真琴は頭を押さえながら煌希の元へ。一体何があった。そんな真琴を煌希はボールに戻した。あれ、本当にどういう仕組みなんだろうな。



「あーっと…静奈、コイツは…。」

『夢依ちゃあぁああん!』

「あ、燈命。」



煌希が説明しようとした途端、燈命が物凄い勢いでじゃれつきだした。それを容易く受け止める、というか相手をするその少女が潰れてしまわないか少し心配なんだが。

それはそうと、煌希が私に会わせたいという相手はもしかして。



「…はぁ…お前に会わせたかったってのはまぁ、コイツのことだ。」

「燈命、あたし潰れるって。」

『大丈夫夢依ちゃん潰したら僕が姐さんたちに潰されるからしないしない!』

「燈命お前もう戻っとけ!」



ボールに戻された燈命の扱いは中々不憫だと思った。そしてそれを見ながら女好きが体を震わせて笑いを堪えていたのを私は見逃さなかった。

ようやく静かになった辺り。これから一体何が始まるというのだろうか。



「それで煌希、どうしてあたしを呼んだの?」

「コイツに会わせようと思っただけだ。」

「…この子?」

「そうだ。 …コイツは夢依だ。」

「ん、夢依だよ。」



手をひらひらと振って夢依、と名乗った少女は全く表情が変わらない。静奈だ、と名乗ったのはいいものの会話が見つからないのにはどうしたらいい。そもそも会わせたいとか、何でそういうことになった。

ぐるぐると色んなことが頭を巡る中、夢依が唐突にそれまでのイメージをガラリと変える一言を放った。



「ねぇ、ここ寒いからどっか暖かいところに行こうよー。」

「言うと思った…ったく、わーったよ行くぞ。」

「やった、雷軌ーのーせーてー。」

『へーいへい、夢依嬢変わらねーなー。』

「……。」



いや、いやいやちょっと待て。は? 初対面の相手がいる中でそんなことを言うものなのか? いやそりゃ小さい子どもならわかるぞ? だけどお前、明らかに私と同い年かそれぐらいじゃないのか? 何のためらいもなく、ごく自然に自分の欲求を。

精神年齢が低いのか、非常識なのか。どうしてこうも私の苦手なやつばかりと出会うのかが疑問でしかなかった。

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