現実と言ノ刃
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先程私が話していた橙のポケモンは燈命という名前らしい。それを聞いて一度燈命、と呼んでみたらとんでもなく喜ばれ果てにはじゃれつかれそうになってちょっとした騒ぎになった。もちろん主に煌希が騒ぎを起こしたようなものだが。



「…んで、これが破和だ。」

『…。』

「ほー…。」



今は煌希の手持ちの紹介を受けているのだが、いかんせん全員キャラが濃い。この破和というポケモンは見た目通りの質らしい、ぐーたらと横になったまま動こうとしない。寧ろピクリとも動かない。大丈夫なのかコイツ。

そして舞流というポケモンには詰め寄られて何やら訳のわからない弾丸トークをされたが煌希がやや必死に宥めていた。



「そういえば真琴、遅いな。」

「手間取ってるんだろうよ。」

「は?」



手間取ってる、とは。何だ、そんなに厄介な相手を私に会わせようとしているのか?
煌希の考えていることが全くわからない。
それじゃあ暇じゃないか。私はまだポケモンと向き合えるような気にもなれないし。

そこで、一つの名案が思い付いた。



「なぁ、煌希。」

「あ?」

「ちゃんとした手合わせじゃないが、久々に一戦…どうだ?」

「……!」



私の言葉を理解したと同時に煌希から溢れ出すのは高揚、闘争…全て嬉々としたもの。不敵な笑みに私も自然と口角がつり上がった。

何だ何だと楽しそうに見る女好きを横目に、沸々と沸き上がる闘争心を抑えられない。早まる鼓動は高揚からか。

目と目でお互い了承の意思。懐かしい感覚。 呼び起こされる道場での毎日。早く、始めよう。
お互い、構えはとっていた。



「………。」



心臓が鼓動を刻む音だけが聴こえる。小気味良く、淡々と。風の音は、もう聴こえない。

丁度いい間合い、仕掛けたのは煌希から。馬鹿正直と言ってもいいぐらい、真っ正面からの正拳突き。予想以上に早い突きに脳が答えを出すより先に体がかわしていた。無駄を最小限に抑えて、素早く切り替えた裏拳をいなす。

ここまでだったらきっと私が優勢。だけど、進歩したんだろう?



「ッ!」



空気を切るような蹴り。それも横から。このままだと体制が崩れてしまうだろう。あぁ、合気道じゃなくなるからこれ、嫌なんだけどなぁ。

蹴りが私に到達するまで、三、二…。

グギッと関節が折れるような音がした。



「っ…てぇええ!」

「お前ほんっとう、体固いな!」



手を離すと若干涙目の煌希はその場に座り込んで股関節の部分を撫でていた。
何をしたかって、横からきた蹴りを掬い上げて関節限界まで上げただけなんだけども。コイツ柔軟サボったな、絶対サボったな。

いつもならもっと続く攻防だけど、煌希があんまりにも痛そうにしているものだから中断にしておいた。

そして、破和の大きな欠伸でパチリと緊張感が一気に解け、真琴が帰ってきたのも同時だった。

そこに連れていたのは一人の少女。

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