現実と言ノ刃
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煌希がキレたことにより小さな乱闘になりかけた。ちなみにその小さな乱闘は破和が破壊光線を撃とうとし、全員でそれを止めたことによって結局半強制的に乱闘は終了になった。
そして今、ようやく落ち着いた煌希が話を切り出した。
「…あー、アイツの方は真琴が上手くやってくれてるだろうから…雷軌、お前はもう八つ当たりすんなよ。」
『しないですぅー。んな大人げない真似しませーん。』
『先程…してましたよね?』
『忘れた。』
すっとぼける雷軌を殴りたい衝動に駆られたものの、八つ当たりはもうしないようなのでそれをぐっと抑える。真琴がいないと苛立ちの募り方が異常に早いのが悩みものだ。舌打ち一つを溢し、仲間たちに指示を出していく。
「アイツには後でお前らの紹介をするから今は戻っとけ、本当はさっきする予定だったけどどっかの馬鹿がややこしくしやがったからな…。」
『んじゃあオレはさみぃから戻っときましょーかねー。』
「てめぇは外出とけ女好き。後は…燈命(トウメイ)以外戻れ。」
『えーオレもー!?』
「つべこべ言うんじゃねぇ飛世(ヒヨ)!」
ぎゃんぎゃんと騒ぐ飛世をボールに戻し、眉間に皺を寄せた煌希は我関せずな様子で寝ている破和も戻す。自身も先程静奈に上着を貸したので若干寒いのだ。冬限定で重宝する燈命と寒い寒いと喚く雷軌を嫌がらせの意味も込めて残しておく。
『煌希さん、あの子が擬人化に慣れましたら私、一緒にお買い物を…。』
「あーあー好きにしろ、でもな舞流(マイル)…間違っても余計なことすんなよ…?」
『それは…承諾しかねますけど。』
「戻れ。」
慈愛に満ちたような微笑みと共に紡がれた言葉を叩き切るように無表情で舞流をボールに戻した煌希はどことなく疲れからか老けたようにすら見える。深いため息をつく姿は静奈が見ればどうかしたかと心配されるものだろう。
その様子を雷軌は楽しそうに眺めながら、燈命は能天気な顔をしながら煌希の両隣に立つ。煌希はというとバックからポケギアを出していた。
『あっれー煌希くん誰に電話かけるのー?あの子ポケギア持ってた?』
「ちっげーよ、ちょっと黙ってろ…あーもしもし?」
不機嫌そうな声のまま電話をし出した煌希に燈命はただ首を傾げるだけだったが雷軌はニヤニヤしながら煌希が電話する様子を眺めていた。
ヒュウヒュウと身を切るような風が吹く中、薄着で電話をしている煌希の姿はいささかミスマッチに思える。燈命がその様子を見ていたのだが、ものの数分で電話は終わってしまった。
「…っし、真琴たち迎えに行くぞ。」
『あれ、煌希くんもう電話終わりー?』
「終わりだっての、ほら行くぞ。」
寒さからか大股で歩く煌希の後ろをついていく雷軌と燈命の姿は寒空の下に紛れていった。
その呼び出しは幸か不幸か
(行こっか、煌希が呼んでる。)
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