現実と言ノ刃
3ページ/3ページ
―バチィッ
『ギャッ!』
『しびれっ!?』
何やら痛みがいつまでたってもこないどころか、電気…雷のような音と蛾たちの奇声が急に聞こえてきた。
不思議に思って恐る恐る目を開けてみるとそこにはバチバチと電気を帯びて気絶している蛾が二匹。一体誰がこんなことを…。でも助かったことは事実。
第三者からの介入によって助かったのだが、辺りを見回しても誰もいない。
「…おーい。」
とりあえず適当に呼び掛けて見るが、応答が無い。誰もいないはずは無い。森が電気を放つわけが無いんだから。
虫じゃないとは信じたいがこれで出てきたのが虫だったらもう私は何の躊躇いもなく気絶しようじゃないか。もう虫は懲り懲りだ。
応答を待っていても仕方ないので、ポーチから簡単な応急処置セットを出して手当てを始める。お茶が入っていたのでそれで洗って、消毒液をかける。
「いたた…。」
当然、消毒液は染みる。軽い怪我だったら唾付けて放置なんだけどな。ジンジンと痛みを帯びる患部にガーゼを貼り付けて応急処置、完了。まぁその内血も止まるだろ。
「あいたた…はぁ、ここから離れないとな…。」
ここにいたらいつまた襲われるかわかったもんじゃない。次襲われたら終わりだ。
痛む足を堪えて立ち上がると、多少いやかなり痛むものの何とか歩ける範囲。適当に歩けばどこかに着くと信じたい。
「…道、わからないけどな。」
『教えてやろうか?』
「は……!?」
また違う声がしたので辺りを見回すとそこには何やら小さくて可愛い生物が。これもポケモン、だよな。…いや、何か見たことあるぞこのポケモン…。
そうだ、確か…。
―
「お姉ちゃん見てみてー!」
「ん、…おー可愛いなこのポケモン。」
「へへ…このポケモンね、進化前も可愛いんだよ!」
「どれどれ…。」
―
…そういえばあの時見せてもらったポケモンが確かこのポケモンだったような…名前、名前が確かええっと…。
何せ昔のことになるもんだから中々思い出せない。必死に記憶を呼び起こそうとする。
確か、伸ばし棒があったような…。
『…何じっと見てるんだよ。』
あ、思い出した。引っ掛かっていた魚の小骨を取り除けたみたいにスッキリとした気分だ。
幾分か弾んだ声で思い出した名前を口にする。そうそう、このポケモンの名前は…。
「ピチュー、だろ?」
ついでにピチューの進化後も思い出した。ピカチュウだったな。そうだ、思い出したぞ。ちょっと嬉しい。
怪訝そうな目で見てくるピチューとは対称的に、私は少しだけそんなピチューに癒されていたんだ。
予想外の助け
(よかった、ポケモンも襲うやつばかりじゃなかった。)
*← #→
back