現実と言ノ刃
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初めて見る異形の生物…いやポケモンに思わず後ずさる。というか私は虫が元々苦手なんだ。あの目がどうも生理的に受け付けない。まずあの形的に蝶?蛾?…蛾かな、何か色合いが茶色っぽいし。
正直に言おう、吐きたい。何で蛾があんなにでかいんだ。ポケモンとはいえあんなでかい蛾がいていいのか。蝿叩きでも退治できないぞ。
あともう一つだけ言うなら喋る蛾なんて私は認めない!
『おい、俺たちの縄張りに入ってるよ。』
『おうそうだな、追い出そうぜ。』
何だ何だ、ここはあの蛾の縄張りだっていうのか。追い出すということは、つまり。
…私の近くにあの蛾たちが寄ってくるということであって。
「っ……!」
『あっ逃げた!』
『追うぞ!』
追うな!来るな!そのでかい目をこっちに向けるな!吐瀉物撒き散らすぞこの蛾!
若干涙目になりながらも全力で走る。半径一メートル以内に入られたら気絶できそうだ。
と、そんなことを内心叫んでいると後ろからいきなり何かが飛んできた。
「なっ……!?」
その何かは見えなかったが、木にぶつかったのかして木からメキメキッという木の折れる音がした。
驚いて立ち止まって後ろを振り返ると、蛾たちが羽を細かく振動させて先程みれなかった何かを私目掛けて放ってきた。
一瞬、だった。
「いっ…ぐぅっ……!」
いきなりの鋭い痛みが私の右足を襲った。何が起こったのか全くわからなかった私はただ膝をついて痛みに耐えるだけ。足を押さえればぬるりとした嫌な感触が手の神経から伝わってきた。
血、だ。不幸中の幸いかそこまて深く切れてないらしい。ただ痛いもんは痛い。じくじくとした痛みと脂汗が酷い。これじゃ動くだけで出血多量だ。
痛い、痛い。何だって私がこんな目に合わなきゃいけない。まず縄張りとか知らないぞ。だけどこのままじゃ、やられる。異世界に来て一発目が蛾に襲われるとかとんだ災難だ。
『俺たちの縄張りに入ったのが悪いんだ!』
『これでも喰らえ!』
蛾たちはありきたりな台詞を吐いてまたさっきの訳のわからない何かを放とうとしてくる。立とうにも足の痛みでロクに動けやしない。
早まる鼓動は私に危険を訴えているけど、どうにもならなくて。でも諦めたくないから力を振り絞って立とうとするともう蛾は構えの体勢に入っていて…。
「…っ…!」
次来る衝撃に思わず目を瞑った。
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