夢幻を繋ぐ約束

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そこ、では別の物語が始動していた。



「…おい、ここはどこだ。」

「ここか?ここは…シンオウ地方。…お前の旅の場所だ、煌希。」



連れてこられた場所はシンオウ地方。さっきまで煌希がいたマサラとは違い、気温が低い。

この地で、一人の物語が始まる。



――



そしてマサラでは一人の少女が旅支度を整えていた。



「…よし、これでいい?月架。」

「あぁ。あとは旅をしながら調節してけばいい。」



夢依はまだ出発しないにも関わらず、すでにバックを持っていた。

その顔は普段とあまり変わらないように見えるが、月架にはその変化がわかるのだろう。嬉しそうに顔が綻んでいる。


そして月架の手には一通の封筒が握られていた。その中身はジョウト行きの船のチケット。



「…準備完了。早くクチバまで行こうよー。」

「はいはい。ちょっと待ってろよ。」



まるで遠足に行く子どもみたいだ、と見ていて微笑ましくなった。

すると夢依が急に自分の前に立って、ふわりと笑いかけてきた。自分が好きな、あの優しい笑顔で。



「月架、ありがとね。あたしと一緒にいてくれて。」

「…あぁ。」

「これから迷惑かけるかもしんないけど…でも、それでもあたしと一緒にいてくれる?」

「…当然だろ。オレは今、自分の意思でお前と一緒にいるんだから。」



だから離れることはない。例え弟を見つけてもコイツと一緒にいる。そう決めた。

この、儚くて…でも確かにそこに有る存在と共に生きると決めたから。


だから、



「オレの方こそ…一緒にいてくれ。」



それがオレの願い。


そして彼女は少し驚いたような顔して、また笑う。



「うん、当たり前でしょ?……約束。」



約束。その言葉はオレの胸にストンと馴染んだ。約束があるということはコイツとの繋がりが増えたということ。

それを嬉しいと思う自分に気づいて、オレも変わったなと苦笑する。


…でも、コイツが離れていかないならいくらでも変わってやるよ。それだけ大事なんだから。



―これからの旅での困難は、試練。それを乗り越えられて…いつか家族といえるようなものになりたい。この儚い存在が寂しくならないように。





(ずっと一緒に歩んで行こう。)

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