夢幻を繋ぐ約束 1ページ/1ページ そこ、では別の物語が始動していた。 「…おい、ここはどこだ。」 「ここか?ここは…シンオウ地方。…お前の旅の場所だ、煌希。」 連れてこられた場所はシンオウ地方。さっきまで煌希がいたマサラとは違い、気温が低い。 この地で、一人の物語が始まる。 ―― そしてマサラでは一人の少女が旅支度を整えていた。 「…よし、これでいい?月架。」 「あぁ。あとは旅をしながら調節してけばいい。」 夢依はまだ出発しないにも関わらず、すでにバックを持っていた。 その顔は普段とあまり変わらないように見えるが、月架にはその変化がわかるのだろう。嬉しそうに顔が綻んでいる。 そして月架の手には一通の封筒が握られていた。その中身はジョウト行きの船のチケット。 「…準備完了。早くクチバまで行こうよー。」 「はいはい。ちょっと待ってろよ。」 まるで遠足に行く子どもみたいだ、と見ていて微笑ましくなった。 すると夢依が急に自分の前に立って、ふわりと笑いかけてきた。自分が好きな、あの優しい笑顔で。 「月架、ありがとね。あたしと一緒にいてくれて。」 「…あぁ。」 「これから迷惑かけるかもしんないけど…でも、それでもあたしと一緒にいてくれる?」 「…当然だろ。オレは今、自分の意思でお前と一緒にいるんだから。」 だから離れることはない。例え弟を見つけてもコイツと一緒にいる。そう決めた。 この、儚くて…でも確かにそこに有る存在と共に生きると決めたから。 だから、 「オレの方こそ…一緒にいてくれ。」 それがオレの願い。 そして彼女は少し驚いたような顔して、また笑う。 「うん、当たり前でしょ?……約束。」 約束。その言葉はオレの胸にストンと馴染んだ。約束があるということはコイツとの繋がりが増えたということ。 それを嬉しいと思う自分に気づいて、オレも変わったなと苦笑する。 …でも、コイツが離れていかないならいくらでも変わってやるよ。それだけ大事なんだから。 ―これからの旅での困難は、試練。それを乗り越えられて…いつか家族といえるようなものになりたい。この儚い存在が寂しくならないように。 夢幻を繋ぐ約束 (ずっと一緒に歩んで行こう。) back |