夢幻を繋ぐ約束

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―ザザッザザッ



『はっ…はっ………。』



ブラッキーは脇目もふらずにマサラのあの家に向けて走っていた。あの家に着くまで、あと数分。



――



「…………。」



その頃夢依は自宅で無気力に過ごしていた。以前にブラッキーと片付けたはずの家はその面影を残さない程にまた散らかっている。

そして夢依の頬にはいくつもの涙の筋があり、泣きつかれたのか床に寝転がってピクリとも動かない。



―カタッ



「っ!」



外からの音にピクッと夢依の体が反応した。しかし少したつとまた動かなくなる。…さっきからこの繰返しである。

何故、反応するか。それはブラッキーが帰って来たのかもしれないから外から音がする。そんな淡い期待を持っている夢依は捨てきれない希望に苦しまされている。


そして、違うとわかるとまた動かなくなるのだ。



「……ブ…ラッ…キ…。」



また涙が頬を伝う。何故ここまで夢依が苦しむのか。それは本人にもわからない。ただ、わかっているのはブラッキーがいないと寂しい、ということだけ。


…夢依は体験したことのない温もりに心地よさを感じてしまった。そしてそれが急に消えた今、精神が安定していない。

そしてまた、期待の音であり、絶望の音が聞こえる。



―コンッコンッ



「っ!……え?」



その音は今までの音と明らかに違っていた。聞き間違いでなければ玄関をノックする音。…幻聴?

しかし夢依は動体視力や聴力に長けている。それを本人も自覚しているため、聞き間違いということは無いだろう。

そしてもう一度。



―コンッコンッ



「……ブラッキー。」



ポツリと呟いた夢依は何かに奮い立たされたように立ち上がり、急いで音の発信源…玄関へと向かった。


……出会った場所での再会まであと…。

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