夢幻を繋ぐ約束

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「そろそろあいつも変わったかな」



広い部屋の中で一人、男が呟いた。
気だるそうに、だけどどこか真剣な表情をして。



「まぁ元のキャラはあれだし今頃世話でもやいてんだろ」



男は誰に話しかける訳でもなく一人で納得している。そしてそんな男を可哀想な物を見る目で見ている男が一人。



「……マスター。何また一人で話してんの…?」

「ん?…あいつは今どうしてるかなーって思って。」

「…気持ちは解るけど…せめて心の中で納めといてや…。」



半ば呆れるように己のマスターに言った男は疲れたように男の隣に座った。



「お疲れ。…で、どうだった?」

「まぁ…多分大丈夫なはず…。自分が視た限りでは、やけど」

「ふーん」

「ふーんって…。…まぁこっちに一回戻ってくるやろうけどな」



興味なさげな返事をした男に脱力するも、自分の予想を述べていく。


その考えをわかっていたのか男はさほど驚かず隣に座っている男を一瞥するだけ。



「…まぁその時は俺が何とかする…ってか絶対帰らせる。」

「…まぁそうやないとあいつをあの子の所に行かせた意味が無くなるもんなぁ」

「そりゃな。何のために俺がめんどくさいことをしたと思ってんだよ」



余程めんどくさかったのか男は顔をしかめている。もう一人の男はそれを見て苦笑いをした。



「…まぁマスターがそんなめんどくさいことをするぐらい大事な子なんやろ?」

「大事ってか…。まぁどうでもいいって訳じゃねぇのは確かだな。…あいつなら信用できるし。」



それは本当に信用しているのだろう。気だるそうな雰囲気がはりつめたものに変わった。



「…あいつなら絶対見捨てることはねぇんだ。だから…


夢依と一緒にいてやってくれよ?」



それは誰に言うわけでもなくただ一人で呟いただけだった。


…その言葉は届くことはなく広い部屋に霧散して消えた。





(…そろそろ俺も動くか)



―そして歯車は噛み合い始める

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