夢幻を繋ぐ約束

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ブラッキーが戻って来てからは大変だった。まず、落ち着いたあたしを連れて家の中に入ると…まぁ、また散らかった部屋を見て硬直した。そして擬人化したもんだからあたしを引っ張って半ば強制的に掃除をさせられた。


それから数日の間に、ブラッキーから色んな話しを聞いた。ブラッキーが過去にトレーナーがいたこと。あたしのところに来たのは今は抜けた組織からの任務のためだったこと。…ブラッキーがその組織で実験されたこと。



そしてその組織からは目をつけられてはいけないことも。



「…ロケット団、ね。」

『深刻そうな口調の割には日向ぼっこか。』

「えーだってー。会ったこともないからさぁ。」



会ったことないからいまいちよくわからない。でも、ブラッキーを実験したっていうぐらいだから…。っていうかあたしの本能?っていうのかな。そんなのが何か危険だから関わるなっていってる気がする。

…あ、そうそう。あたしブラッキーに言いたいことあったんだ。


夢依は寝転がっていた体を起こし、体についた草を払うとブラッキーのところへ近寄った。



「ねぇねぇブラッキー。」

『ん?なんだ?』

「あのさぁ…名前、つけていい?」

『………は?』



昨日から思っていたけどブラッキーがあたしのところにいてくれるなら名前をつけたいと思った。だってあたしとブラッキーは一緒にいるんでしょ?
あたしには名前があるのにブラッキーにないのは何だか不公平だ。



『…まぁ、いいけど。』

「そっかー。まぁもう考えてあるから大丈夫ー。」

『早っ』



実は昨日の夜に考えてたんだ。めちゃくちゃ頑張った。気に入ってくれたらいいなぁ。

…よーし、いうぞー。


夢依は少しの緊張を覚えながら、ブラッキーの名前を告げた。




「…月架。」

『げっ……か?』

「うん。月架。」



月光ポケモンのブラッキー。どうしても月って単語を入れたかったんだよねー。埃を被った辞書を引っ張り出してあいそうな名前を考えた。

…どうだろ。気に入ってくれるかな?



「あ、月架って言うのはね、月って単語を入れたかったのと…。」

『……ん?』

「…あんたが誰かの架け橋になれたらいいなぁって。」



架け橋。何だかあんたはそれになりそうな気がするから。誰かと誰かを繋ぐ架け橋、そんな風になってくれたらなぁ。なんて。



「…どう、かな?」



ブラッキーが目を見開いたまま静止状態なので何だか不安になってきた。…どうしよう、他の考えてないよ。

ブラッキーの方をじっと見つめると、ハッとしたように一回まばたきをした。



『あ、…えっとだな…。』

「……?」

『ありがと、な。気に入った。』

「…そっか。よかった。」



よかったー。本当にどうしようかと思ったよ。よし、じゃあ今日からはブラッキー改め月架だ。よろしくね、月架。





(……コイツからどんどん離れたくなくなる。)

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