夢幻を繋ぐ約束

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擬人化…。一度出来なくなってからもうできないと思ってた。…そもそも本当にできるのか?
久しぶりの擬人化に少し体に意識を込めてみる。

すると体が、光って…あの懐かしい感覚になる。どこか泣きたい気持ちになるぐらい。



「…やっぱり、できる様になったじゃねえか」



光が収まって完全に擬人化したオレを見た幻利の顔はどこか嬉しそうで、満足そうだった。



「…でき、た。」



ポツリと溢れた言葉は自分でも信じられないくらいか細い声だった。半信半疑でやってみた擬人化。

…それが意味するのはオレが…アイツを守りたい、大事にしたいと思ったから。



「…これではっきりしたな。」

「何がだよ…。」

「そりゃ決まってるだろ。お前は、こっちにいるべきじゃない。」

「なっ…そんなの…!」



それはオレに組織を抜け出せという意味。でもそれは無理なことで。そりゃオレだって抜け出したい。だけど脱走はできない。捕まった日にボールに入れられているし、…何よりコイツに被害が…。



「お前は…余計なこと考えんな。ボールならもう壊した。」

「…は?」



オレは耳がおかしくなったのだろうか。壊した?ボールを?…どうやって…。



「細かいことは考えんな。俺のことも気にしなくていい。」

「っなんでお前はそこまで…オレのことを…!」



オレを助けてこと幻利に何のメリットがある?コイツはこういう時に騙すやつじゃないのは知ってるからこれは恐らく真実。でもこの行動の意図が読めない。



「だから言ったろ?気にすんなって。」

「それで…納得できるわけ…無いだろっ」



いくらコイツの地位が組織内で高いからって行き過ぎた行動をすれば他の幹部たちから目をつけられる。ましてやアイツに、…サカキに目をつれられたりなんかしたら…。



「…俺がこうして行動してるのはな、お前のためじゃない。アイツのためだよ。」

「アイツ…?」



幻利のいうアイツがわからないオレは首をひねることしかできない。そんなオレに幻利は少し切なそうに微笑した。
…何でお前がそんな表情をするんだよ。



「…お前がさ、任務のために一緒にいた子…夢依のことだよ。」

「夢依…?」



聞きなれない名前に一瞬戸惑うもすぐに理解する。アイツのことだと。任務、と言っているし間違いない。…何で幻利が知ってるんだ…?



「とにかく、後先考えんな。アイツのとこに戻ってくれ…。」



それは、オレが初めて聞く幻利の切実な声。まるで自分は行けないから、と言っているような気がした。

そんな幻利に少し戸惑っていると、幻利はすぐにいつもの飄々とした表情に戻ってオレの背中を押すように言葉を投げかける。



「…ほら、行けよ。擬人化できたってのに夢依のとこに行かないってわけないだろ?」

「……わかった。…あり、がとな。幻利。」



結局オレはアイツの元にいたかっただけなんだ。傍にいてとても安心できるアイツの元に。それを色んな理由をこじつけて否定したかったんだよ。だってオレは…R団の一員で、被験者で、アイツを騙そうとしていたんだから。

…でも本当に抜け出せるのなら、オレは喜んで抜け出してやる。アイツのことも、オレを支えてきた弟のことも全部全部、中途半端だから。

―オレは擬人化を解いてアイツの元へと地面を蹴った





(擬人化ができたオレに、もう自分を偽り続けることはできなかった)

―崩れたのは彼女に背を向けていた自分自身

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