太陽と月
1ページ/6ページ





きらきらと導くように輝く照明が、今この状況での希望の光だった。

アブソルの悪の波動が敵のポケモンを倒していく。時々ポッチャマがサポートに出てくれる。アブソルの負担が少し減って、楽になったのを感じる。
船長さんがくれた傷薬で、どうにかピチューを回復したい。だけど、いつ誰が来るかもわからない通路ではできなかった。さっきから感じていたけれど、段々と敵と会う頻度が上がっている気がする。
続く緊張感に、目眩がした。

「っ……」

『陽佐、大丈夫?』

「うん、大丈夫だよ」

心配するポッチャマに笑いかける。空元気なんて、そんなわけない。まだ、大丈夫。
もう何人と遭遇したのだろう。階段も上がって、ここは何階だ。遭遇する頻度が上がっているのなら、上の方が重要なんだろうか。

『ここを真っ直ぐ行くと医務室があるよ、そこで少し休もう』

「あぁ……ピチューの回復ができるね」

ポッチャマの言葉に安堵のため息が溢れる。走り出したいのを我慢して、そっと進む。ピチューの回復をして、少し休んだらまた進もう。

一歩一歩、進むたびに心臓ががんがんと早鐘を打つ。緊張が張りつめる。

『陽佐!』

「!」

『ここ、ここだよ』

集中しすぎて通りすぎようとしていたみたいだ。ポッチャマが肩を叩いて教えてくれた。
アブソルを見ると、いないと首を振っている。よかった、誰もいないみたいだ。

そっと音を立てないように、ドアを開ける。中は学校の保健室よりも少し狭い、どこか殺風景な部屋だった。消毒液の臭いが鼻にツンとくる。
入ってドアを閉めると、深いため息が出た。

「……よし」

でも自分の休憩よりも先に、ピチューの回復だった。ボールの中で休んでいるとはいえ、辛い状態だろう。
ボールから出すと、呼吸は落ち着いているけど、切り傷だらけのピチュー。

『……おー』

「ピチュー、ポッチャマの説明は後で。まずは回復しよう」

『いや、ボールの中から見てたし、状況もわかってる』

ピチューをベッドの上に乗せて、傷薬を取り出す。少しピチューの身体が強ばったけれど、今は仕方ない。
スプレーになっている傷薬を、ピチューの切り傷に吹き掛ける。
ピチューはボールの中から見ていたと言っているけど、ポッチャマには何も教えていなかったから、ピチューの傷をみて泣きそうになっていた。

『いっ……てぇ!しみる……』

「我慢してね、これからピチューの力が必要になるから」

『っっ……わかってるよ……』

しみるしみると言いながらも大人しく治療を受けてくれるピチュー。そんなピチューの姿を見て、アブソルは鼻で笑った。

『ふん、ざまぁねぇな』

『るっせ!これすごくしみるんだぞ!』

「ほら、もう少しで終わるから」

最後に細かい切り傷に吹きかけて、ピチューの尻尾がびびびっと震え上がった。そんな器用な震えかたできるのね。
終わり、と言うとピチューはやっと解放されたとばかりにベッドにころんと転がった。

『……もう怪我したくない……』

「いやー治ってよかったよ」

『陽佐……えっと……』

いつの間にかうちの足下にいたポッチャマは、ちらちらとピチューを見ている。ああ、説明がまだだった。
ポッチャマを抱き上げて、ピチューの前にもっていくと、ポッチャマの身体がかちこちになった。

「怖くないよーピチューだよー」

『ピチュー……? よ、よろしくね』

『あぁ、よろしくな』

小さな手でぺちぺちとポッチャマの手を叩くと、ポッチャマもぺちぺちと手を叩いた。かわいい。

『よし、治療も終わったし』

ピチューはポッチャマから離れると、ベッドから飛び降りたピチューは、アブソルの背中に飛び乗った。

『……あ?』

『行け、アブソル号ー』

『落ちろ』

バシバシとアブソルの背中を叩くピチュー。さっき鼻で笑われたことに対する仕返しだろうか。
間髪をいれずアブソルが背中をぶるぶるっと震わせると、ピチューは床にあえなく落ちてしまった。

「……ふふっ」

何だか、二人ともお互いがいて元気になったように思えて、嬉しくなった。ポッチャマも、その様子を見て笑っていた。

と、そこで何の予兆も気配もなく、ドアが開いた。

*← #



back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -