太陽と月
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現在初のポケモンセンター使用中。宿舎以外にもここは病院でもあるから、病院独特の洗浄された空気。今はフロント近くの椅子に座ってピチューの治療が終わるのを待っている。気絶したピチューを連れていけば驚かれたけれど、大丈夫かな。ただ、電気が操れなくてとかそれだけじゃなかったように思う。もっと、何か別の。



「…乗り掛かった船っていうんだっけ」



ぽつり、呟いてももちろん返事は誰もしてくれない。アブソルはやっぱりボールから出てきてくれないから。仕方ないとばかりにチクタクと動く秒針を見ている。カチ、カチ、待ってる時間はこんなにもゆっくりなのに。一分一秒、一日、全部が遅く思える。

手紙を待っていた日々から、ずっと。


―カチッ


やけに耳に残る時計の音が聞こえた次の瞬間、ジョーイさんが治療室から姿を表した。どこか遠い世界から連れ戻されたように目を見開いて、立ち上がるとジョーイさんに駆け寄る。

ピチューは小さく寝息をたててすっかり体調もよくなった様子だった。



「はい、ピチューはもうすっかり元気になりましたよ!」

「あ、ありがとうございます…」

「少し疲労が溜まっていたのと、あとは…精神的に弱っていましたが…何か知っていますか?」



精神的に、その言葉にピチューが叩きつけるように怒鳴っていた言葉を思い出す。でも、それだけだ。



「いえ、何も…」

「そうですか…また何かあればいつでも」

「はい、本当にありがとうございます」



ジョーイさんとそんな会話を交わし、ピチューを抱き上げて、そうだ、と思いつく。



「あの…泊まる手続きってどうしたら…」

「あぁ! それならこちらへ!」



笑顔のジョーイさんに案内されて初めてだということを告げると簡単な説明を受けた。何やらトレーナーカードがあれば宿泊は無料になるらしい。有料のものもあるみたいだけど、大まかなサービスは無料、凄いな太っ腹だポケモンセンター。

でも、だ。トレーナーカードなんて持ってないよ。少し困った顔をしていたのか、ジョーイさんが初めてならカードの発行を、と説明の後、発行に必要な手続き用紙を渡してくれた。



「………まぁ、身分証明みたいなもんだからそりゃこういうのいるよね…」



手渡された紙とペンを持ってフロントから離れて椅子に座ってピチューは膝に。紙とにらめっこだ。何が問題って、出身地とか知らないよ。つい昨日この世界に来たばっかだよ。

うんうん悩むこと数分、マサラタウンとペンを走らせた。この世界で一番初めに足をついた町だから、ある意味間違えじゃないよねと冷や汗を流しながらジョーイさんに紙を持っていった。



「はい、ありがとうございます! では少々お待ちください」



完璧な笑顔を見せたジョーイさんはカタカタとパソコンに打ち込み数分後、カードが発行された。真新しいそれを受けとると、これで全部証明できるんだなぁと感動。今度マサラタウンに住民票出そうと思いつつ宿泊の手続きをした。


一人部屋を借りた。少しだけ大人になった気分。

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