太陽と月
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怜さんの計らいによって招待された孤児院ラティルト。なにやら色んな子どもたちがいるそうで、今はもう小さな子たちが寝ている時間帯らしい。だから中はとても静かなんだって。

入った時は人工的な光が凄く眩しくて目を細めたけど、今はもう慣れた。



「陽佐さん、そちらへどうぞ」

「あっ、ありがとうございます…」



ここの孤児院、入り組んでいて迷路みたい。この部屋は来客用で、一人部屋みたいな感じ。でもこの部屋につくまで結構曲がり角があったような。

促された椅子に座り、怜さんと向かい合う。机を挟んだこの状況はなんだか面接を行うみたいだ。



「………っ!」



向かい合ってすぐに、背筋が強張った。なんでかって、怜さんの目が真っ赤だったから。鈍い光を帯びたそれはルビーみたい。でも、少しだけ鳥肌がたった。

そんなこっちの反応なんて気にしていないのか、怜さんは切り出した。



「貴方は、どうしてマサラで迷ったのですか?」

「えっ…?」

「元々マサラは狭い土地です。ラティルトの周辺から少し進めばすぐに民家があるのですが」

「え、っと…」



言えない、もしかしたら違う世界から飛んで来ましたーなんて言えない。信じてなんてもらえないしどう考えたっておかしな人だと思われるに違いない。

どくんどくんとうるさくなる心臓、渇く喉に息が詰まった。



「………答えられないというものであれば構いません。無理強いはさせるつもりはありませんから」

「す、すみません…」



重たい空気、見かねた怜さんが一つため息を落とした。ありがたいんだけど、申し訳なくて目線を反らした。



「じゃあ代わりに、そうですね…よろしければご家族のお話をしていただければと思います」

「えっ、家族?」

「はい、折角ですしお話しませんか?」



ぱちくりと目を瞬かせれば表情を変えていない怜さん。不機嫌そうに見えるのは気のせい、だよね? でも孤児院って、怜さんも親がいないはずなのにいいのかな。ていうか突拍子もない話題でちょっと拍子抜けしたというか、いや安心したけどね。

その話題にぎこちなく頷くと、それではどうぞと促された。



「えっと、四人家族で…母と父と、あと…兄が一人います」



そうだ、今どうしてるのかな。お母さんもお父さんも、心配してるのかな。あぁでも、今はちゃんと話さなきゃ。

それから、お母さんとお父さんの話をした。どっちかどっちに似ているかとか。至って普通の家なんだよなぁと話していて改めて感じたけど。



「…お兄様は、どの様なお方で?」

「あー…っと…うーん…5歳離れてて、すっごく強くて…それで、それで…ちょっと素直じゃないけど…いっぱい傍にいてくれた!」

「お兄様のこと、凄く好いているんですね」



僅かながらに口角を上げた怜さんは何故だか嬉しそう。微笑む、とまではいかないけど。 うん、でもその質問は本人がいないから答えられることだよね。



「えへへ……好きですよ。それだけいっぱい好いてもらってたと思ってます」

「そんな素敵なお兄様なら、一度お会いしてみたいですね」

「そうですか? でも、ちょっと荒っぽいから…素敵、…うーん…だけどすっごい自慢です!」



あぁこんなこと直接は言えないけど、他の人に言うのもなんだか照れ臭い。頬が緩んでにやけてるのは仕方ないんだ。


本当、会いたいなぁ。

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