太陽と月
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ポッチャマの指示に従って階段を駆けおりる。船長さんの部屋を通りすぎて、向かう先はどこだろう。そういえば、最初は必死で進んでたから道をいまいち覚えていない。
「ポッチャマ! どこまでいくの!?」
『出口から聞こえてくる!』
「出口!?」
出口から届く笛の音ってすごいな。ポッチャマの指示通りに角を曲がると最初に入ったところが見えてきた。
『船長さん!』
「おお!無事だったか!」
出口まで走り抜けると、そこには船長さんと警察の人たちと、テレビ局らしき人たちがいた。
大勢の人たちに、思わず面食らう。混乱する頭で、アブソルをボールの中にしまっておいてよかったと思った。
「警察の人たちに今色々と話をしていてね。とにかく、無事でよかった」
「船長さんも、あれから何事もなくてよかったです!」
あのあと、警察に連絡した船長さんは、警察と合流した後に船内で倒れていたしたっぱたちを捕まえていったらしい。
「乗客も無事だし、ポケモンたちもみんな無事だよ! 誰も欠けていない」
「よかった……」
「ありがとう、本当に」
手を差し出され、ポッチャマを片手に抱いて握手した。全員が無事ということに安堵が押し寄せる。
「ポッチャマ、案内をよく頑張ってくれたね」
『うん!』
「さあ、あっちで英雄の取材が待ってるよ。陽佐くん、行っておいで!」
背中を押されて前に出されると、沢山の人たちがカメラとマイクを持っていた。フラッシュがいっぱい。これは眩しい! 芸能人ってすごい!
こんな状況を体験したことなんてなかったから、心臓がバクバクしてる。
「わわっ……」
「君がこの船を救ったという子かな!?」
「す、救ったっていうか……」
「是非取材を!」
「ひぇええ……ま、また今度で!」
大勢の人たちに囲まれてどうしたらいいかわからなくなったので、ついダッシュで逃げ出してしまった。カメラを持った人が慌ててシャッターを切る音が聞こえる。
「あっ、まってー!」
後ろから色んな声が聞こえてくるけれど、構っていられない。船長さんごめんなさい。ポッチャマは後ろに向かって手を振っていた。のんきだな!
『ねぇ陽佐!』
「はい!?」
『僕、陽佐と一緒に来てよかった!』
「……うん!」
満面の笑みのポッチャマに、胸が熱くなる。ああ、間違っていなかったんだ。これでよかった。自分の手で助けることはできなかったけれど、トレーナーたちの元に戻ることのできた、捕らわれていたポケモンたち。
後悔なんてなかった。
『僕のこと、助けてくれてありがとう!』
ぎゅっと強く抱きついたポッチャマに胸が締め付けられる思いだった。そう言ってくれて、ありがとう。ついてきてくれて、よかった。
実はさっきのテレビカメラは生中継ということは露知らず。
このまま次の宿まで行ってしまおうと走る、走る。新しい仲間を連れて。海の案内人は、遠い彼方を指差した。
出会いと別れの風が吹く
(さようなら、最愛の子)
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