太陽と月
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未来はここの敵に関してはわかっているけれど、船内はわからないというので、引き続きポッチャマを抱っこして案内してもらうことにした。
ちなみにピチューはひと悶着の末にアブソルの背中に乗って快適そうにしている。対するアブソルはめちゃくちゃ不機嫌そうだけど。ピチュー曰く、ボールに入れておくよりすぐに対処できるだろ、とのこと。まあそうなんだけどね。
『操縦室に向かえばいいの?』
「ええ、売りさばくポケモンたちが乗っているのであれば、この船ごと拐っていくでしょう。ポケモンたちを回収する、途中までの移動手段だとして」
『……っ』
その言葉にポッチャマは身を強ばらせてしまった。しかし、未来にはなんも悪気もなく、ただ言葉を連ねているだけのように見える。
この船ごと拐っていくだろうから、操縦室に向かえと未来に言われ、今は操縦室を目指している。
ただ、疑問はあった。
「乗っていた船員さんたちはどうするんだろう……」
「そうですね、労働力とするか、どこかの町に下ろすか、あるいは海に投げ捨てるかでしょう」
「投げ……」
さらりと告げられたことに、思わず言葉が詰まる。なんて返せばいいかわからなかった。だけど、もしそんな最悪の事態が起きるんだったら、尚更助け出さないといけない。
『……お前、戦えるのか』
「多少は心得ております」
アブソルからの質問。未来は前だけを見て答えた。少し気になっていたけれど、未来は何処と無くアブソルに冷たいように感じた。気のせいかもしれないけれど。
そういえば、階段を上がってからというものの敵に会う頻度が上がっていたのに、さっきから全然会わない。それどころか階段が見えてきてしまった。アブソルが探ってくれていたとはいえ、ずっと周りに気を張り巡らせていたからか、拍子抜けというか。
『階段は登らなくていいよ』
「いいの?」
『うん、一番上にはないんだ』
てっきり、一番上にあるものかと。ポッチャマの指示通りに進むと、操縦室らしきものが見えてきた。
『あそこだよ!』
ポッチャマがぱたぱたと手を動かす。見張りも誰もいない。少しそれが違和感があったけれど、今の内だ。
アブソルの警戒心もぐっと上がって、空気がピリピリとしている。
無意識の内に息を止めていたのか、たどり着いた時に空気を吐き出した。
「……行くよ」
ドアの前に立ち、ドアノブに手をかける。そして、一気に開けた。
「っ!?」
そこには、三人の男たちが操縦室を占拠していた。普通のしたっぱたちとは違う装いに、この三人がこの事件の黒幕だとわかった。
三人が一気に振り向いて、大きく目を見開く。
「誰だてめぇ!」
「おい、見張りはなにをしていたんだ!」
「黙れ!ここで排除すれば終わることだ!」
次々と怒鳴り声が重なりあう。こっちはもう臨戦態勢だった。
だけど、そこまで広くない操縦室、通路で三人揃って全部のポケモンを繰り出してくることはなく、一人がゴルバットを出してきた。
「みんな、行くよ!」
ここからが正念場だ。絶対に負けていられない。
さっきはズバットにやられてしまったピチューは、その進化であるゴルバットに敵意を向けていた。
「ピチュー、いける?」
『あぁ、任せろ』
アブソルの背中からおりたピチューは、パチパチと電気を帯電させている。少し後ろに下がった瞬間に、バトルは始まった。
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