太陽と月
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適当におやつを買ってからサントアンヌ号の船着き場に向かうと、意外と人は少なくてまばらにいるだけだった。サントアンヌ号の姿はとっても綺麗で、キラキラと太陽の光でまばゆく照らされていて。真っ白なかたまりがゆらりと佇んでいた。

少し見とれながら近くまで進むと、丁度船の近くに船員さんがいた。


「あ、あの、今って見学やってますか?」

「ん?あぁ、話を聞いたのかな?案内してあげよう」


声をかけると、人のよさそうな笑みを浮かべた船員さんが中に入れてくれた。内装もすごく落ち着いていて、ゆらゆらと波に揺らされていなかったらここが船の中だとはわからないぐらい。わぁ、と口を開けていると船員さんに笑われてしまった。

こっちだよ、と船員さんの後をついて静かな船内を歩く。コツコツと船員さんの足音がやけに大きく聞こえた。

それから、窓から見える海上とか、食堂からしてくるいい香りだとかを楽しみながら甲板も案内してもらって、潮風を一身に浴びて。髪の毛がきしんだのをピチューがちょいちょいといじったり。こんなところ入ったこともないから、すごくわくわくしたんんだ。


だけど、少し変だなって、思った。ピチューもそれに気づいたのかくいくいと服を引っ張ってくる。


『……おい、人がいないぞ』


小声で話しかけてきたピチューに小さく頷く。そう、ピチューの言う通り人がいない。ちらほらと船員さんは見かけるけど、そうじゃなくて。何か、違う。
ざわりと、胸騒ぎがした。足を止めると、船員さんも足を止めて振り返る。


「あの、そういえば他の乗客の人たちは……」

「あぁ、今は休んでいるよ」

「……全員、ですか?」

「そうさ」


船員さんが一歩近づいてくる。一歩、下がる。その目は少し暗く染まっていて。また一歩近づいてきた時、咄嗟に声を上げた。


「っピチュー!」

『おう!』


ピチューは肩から飛び降りると前に立つ。船員さんが腰に手をかける前に、咄嗟に指示を出す。


「ピチュー、でんじは!」


瞬間、バチッとした音が小さく響いて船員さんはうめき声を上げてその場に倒れる。大きく息を吐くも、その場から逃げ出そうと駆けだした。大きく床を蹴って。
でも、やけに大きく聞こえた最後の言葉。絞り出すような声に、背筋が凍えた。


「っガキが一人逃げたぞ……捕らえろ!」

「……!」

『……誰かと、通信してる』


何で、こんなことに。

それから、誰がどこから出てくるかもわからないからと、そっと部屋をのぞき見したりしたけれど、どこも乗客の姿はなくて。どこか一つにまとめられているのかもしれないとピチューの声に大きく息を吐いてまた駆けだした。

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