太陽と月
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生い茂る緑、緑。雑草を踏んで、目の前に焦点を合わせればトキワの森だ。今から、バトル。
とりあえずピチューを出してみようか。
「…えーっと、どうしたらいいかな」
『いやお前引きこもりの方とも話せよ』
「…あ、うん」
引きこもりって、当たってるけども。
呆れた様子のピチューに苦笑いを溢して、アブソルもボールから出す。不機嫌そうな目は本当に変わらない。
明らかに面倒くさそうな雰囲気だけど、これからバトルなんだ。慣れないと。
『…まぁ、悪いんだが』
「ん?」
『俺は一対一だと正直弱い』
「は!?」
『…どっちかっていうとあー…ダブルバトルっていうのか? あれとかの方が好きだな…』
ダブルバトルって指示を二匹分出さなきゃいけないのでまだ早いと思います先生。さすがにそれはわかっているのか、まだしないとは言っているけれども。
心なしか気まずそうな表情を見せたピチュー。ふと助けてもらった時に倒れてしまったのを思い出した。そうだ、確かあれは電気の使いすぎ?だったんだっけ。
『…おい、やるのか。 やんねーのかどっちだ』
「えっ!? あ、やるやる!」
物思いにふけっていると、急かすようなアブソルの声に我に帰る。目を向けた先にある、鈍く光る銀色が蒼い森に少しミスマッチだと思った。
「実はね!覚える技は一応頭に入れたんだ!」
『あー…そんなら面倒な説明いらないな。じゃあやるぞー』
「えっ」
そこからのピチューの行動は早かった。さっさと先陣を切ってざっくざく草むらを歩いていくピチューはどことなく機嫌が良さそうに見えたけど、ちょっと待って早い。
その後をため息一つ溢して仕方なさそうについていくアブソル。なんかアブソルの背中が色々諦めたように見えるのはきっと気のせいじゃないと思う。
「ピーチューやーい待ってよー」
『…構えとけよ』
「えっ」
少し低く、緊張を帯びたピチューの声が聞こえたと同時に何かが飛んでくる。認識する間もなく一直線に飛んできたそれをピチューは電撃で相殺した。目の前で行われた一連のことに全くついていけなくて、ぱちりと目を瞬かせた。
「…え?」
『指示しろ!』
ピチューからの鋭い声にようやく体が反応した。初めてのこと、何を指示したらいいのかわからなくてしまりかけた喉。それを無理やり震わせて咄嗟の指示が喉を突く。
「で、でんこうせっか!」
ピチューは指示通り、勢いよく一直線。一瞬見失うほどのスピードで突っ込んでいったピチューは地面を蹴り、相手に向かって飛びかかる。それは見事に相手の胴体に直撃した。
鈍い音が耳に響き、ピチューは地面に足をつける。ピチューの体勢はまだバトルが終わっていないことを示していた。
少しよろけた影はもううちの目にも見えている。それは、明らかな敵意を見せて羽音を散らすスピアーだった。
『…前のやつとは違うぞ』
『えっ?』
『前の、お前を襲ったスピアーとは違う』
聞き返すとちゃんと教えてくれたピチュー。襲った、そういえばあの時。でも、違うのか。
唸るような羽音。一瞬の硬直状態の後にスピアーが声を出した。
『あいつを、知っているのか……?』
『倒した、その後は知らねぇな』
『っ……! お前、らか!』
鈍く、光った目。羽音が鋭くなって大きな針から無数の針が飛び出した。ミサイル針だ、と認識してから指示を出すには距離が近すぎて、声を出そうとした時にはもう、ピチューに直撃していた。
「っ、ピチュー!?」
『……っ…ぅ…ってー…』
砂ぼこりが舞って、一瞬ピチューが見えなくなる。心臓が締め付けられそうになったけど、すぐにピチューの姿が見えたことで詰まった息も通り抜けた。体力はまだ大丈夫なのかとか、全くわからない。どう、しよう。こういう時、どうしたらいいの?
ブゥンと鳴る羽音が、やけに響いて聞こえた。
『っ指示!遅い!』
「ご、ごめ、」
『早く!来るぞ!』
タンッと距離をおいたピチューはうちに指示を飛ばす。どっちがトレーナーだがわかんないよ。
スピアーがまた迫ってくるのを見て、からっからの喉がようやく指示を弾き出した。
「ピチュー、10万ボルト!」
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