太陽と月
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名前、とか擬人化、とかこの世界にはどうやら知らないことばかりだそうです。ゲームと違いすぎたこの世界。ちょっと頭がパンクしそうだ。
ポケモンセンター、宿泊施設の一室でアブソルとピチューと交流をとるべく今どっちもボールから出して向かい合ってる。アブソルも人前じゃなかったら渋々とだけど一応出てきてはくれるから。
ピチューは気に入ってるのか小さなクッションの上にちょこんと座っていて。うん、似合う似合う。アブソルは…まぁ、うん。そっぽ向いてるけど。
「今日は!ジム戦をやってみたいと思います!」
『…はぁ?』
『…お前、バトルしたことあった?』
「…な、ないけど」
うぐっ、そこを突かれると痛い。これまでアブソルと出会って、ラティルトでお世話になってから森でピチューと出会って…だからバトルも何もやったことがない。もちろん、対トレーナーなんてもっての他だ。
『俺…負け戦なんてやりたくないんだけど』
「うぐ…っ」
『指示もやったことないのにいきなりすぎるだろバカか?』
「………」
ばっさばっさとピチューに痛いところを突かれる。ま、町にきたらジム戦かなって思うじゃん。いきなりボス戦は無謀だったか、いやそうだよね。
小さく膝を抱えるとピチューがため息をついてアブソルの上に飛び乗った。いきなりのことで、アブソルもびくっと毛並みを逆立てる。
『…おい』
『よし、じゃあやるぞバトル』
「え?」
『さっさとトキワの森にいくぞ、野生とバトルしてから慣れろ』
『俺に乗った意味はなんだよ…』
『このまま俺をつれてけ』
『俺は乗り物じゃねーんだぞ…!』
俺はボールに入ると言い出したアブソルに、うるさい引きこもりとバッサリなピチューはいいコンビだ。喧嘩するほど仲がいいのか。そうか。
降り下ろそうと頑張るアブソルだけどピチューは背中にへばりついてるので中々落ちない。ここだけ見たら結構可愛い光景だと思う。言葉がわからなかったら、だけど。
『降りろよちび!』
『俺だって好きでこんな小さいわけじゃねぇよ引きこもり!』
あ、これは埒があかないと悟ったのでどっちもボールに入れてさっさと外に出ることにした。カチリと閉じた音がすれば一気に静かになったけどボールはガタガタ揺れている。うん、気にしないぞ。
「よーしバトルバトルー」
少しドキドキする。トレーナーって感じだなこれは。リュックを背負ってセンターから小走りに抜け出す。外は明るくて、暖かい。胸いっぱいに空気を吸い込めば爽快な気持ちになった。
太陽の下、光を一身に浴びながら街を駆け抜ける。早く、早く行こう。
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