太陽と月
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携帯食料だとかの買い物が終わって、丁度昼時だな、なんて考えていた。ピチューはまだボールに入っていないからうちの肩に乗っていて、町の様子を眺めている。アブソルはまだボールの中。その内引きこもり生活始めそうだなとか思ったのは秘密だ。

そんな時、ぴくりとピチューが反応して町の入口へ視線を向けた。それにつられて同じ方向を見ると、何か近づいてくる人たちが見えた。見覚えの無い人たち、すると急に名前を呼ばれて驚いていると橙の髪の毛をした眼鏡の似合う、優しそうなお兄さんが苦笑いを浮かべた。翡翠の瞳が、薄く細まる。初めて見た色に思わず見惚れそうになった。

ギリリ、ピチューが若干体を強ばらせているのがわかった。わかったけど、ね? あのね、肩にね、ピチューの手とか食い込んで痛い。痛い。



「しっきー、いきなり名前呼んでもわからないだろ?」

「あ……」



橙のお兄さんが黒髪の女の子をたしなめると女の子は慌てたように目線を泳がせてからまたうちの方に視線を合わせた。

その子は綺麗な青い、薄い青、透き通った、純粋な目。思わず見とれて、綺麗、と喉から出てきそうになった。



「えっと、…怜…じゃなくて…、…ラティルトから、来た…漆姫で…おつかいで…探してた」

「…しっきー…一気に詰め込んだな」

「支智は静かにしてて」

「…えーっと…ラティルトから来た…漆姫、ちゃん…と…」



ちらりとお兄さんに目をやると支智、漆姫の付き添い。と答えてくれた。

相手の素性もわかって肩の力が抜けたけど、ピチューはもちろんラティルトのことは知らないのでまだ警戒してる。でも害はないとわかったのか一応力は抜いてくれた。

漆姫ちゃんは大きいケースを抱えていて、腕がぷるぷると震えていた。おつかいってこれかな、あと重そう。



「…漆姫、でいい」

「え?」

「漆姫がいい」

「…え、…あ!漆姫、って呼んでもいいのかな?」



頷いた漆姫ちゃん、じゃなくて漆姫は人見知りなのか中々目を合わせてくれない。ちんまりしてて可愛いけども。

暫く見つめること数分、ちらりと目線を上げた漆姫がおずおずとそのケースをうちに差し出した。



「…これ、怜が…渡すの忘れてたタマゴ」

「…怜さんが?」

「うん、…陽佐に、って」



ぽつりぽつりと話した漆姫からそのケースを受けとると、それは確かに命が育ってる重みがした。ピチューも、そのタマゴをじっと見て物珍しげにしている。アブソルも反応したのか、腰のボールがかたりと揺れたのがわかった。



「…さて、漆姫のおつかいも終わったな」

「うん、でも…陽佐ともうちょっと話したい」



支智さんの服を少し摘まんだ漆姫はダメ?と支智さんに聞く。支智さんは一瞬悩んだ素振りを見せたもののすぐに漆姫の頭を撫でていいよ、と答えた。パッと目を輝かせた漆姫はじゃあ話そうと町から少し外れたところを指差した。



「あっちなら、アブソルも出てこれるよね」

「え? あー…多分?」

「じゃあ、行こう」



支智さんはその漆姫の様子に嬉しそうに笑って漆姫を先導していく。慌てて後ろからついていくと、何となくこの二人が兄妹に見えた。

アブソルのこと、怜さんから聞いたのかな。

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